事業税








事業税(じぎょうぜい)は、地方税法(昭和25年7月31日法律第226号)に基づき、法人の行う事業及び個人の行う一定の事業に対して、その事業の事務所又は事業所の所在する道府県が課す税金である。


個人の事業に対して課すものを個人事業税・法人の事業に対して課すものを法人事業税と呼ぶことが多いが、法文上は同一の税目であるため一つの項目で解説する。


法人税における所得の計算上、道府県民税と異なり事業税は損金算入が認められている(法人税法38条2項)。また、同様に所得税における事業所得・不動産所得・山林所得・雑所得の計算上、事業税は必要経費への算入が認められている(所得税法45条)。


なお法人の事業税は、法人の道府県民税及び地方法人特別税とともに、申告・更正・決定等について課税実務上きわめて大きな関連性がある。(俗に、法人二税、或いは国税の地方法人特別税を含めて、法人三税と言われる。また法人三税というと、法人税、住民税、事業税を指すこともある。)




目次






  • 1 課税標準(原則)


  • 2 課税標準の例外:事業の情況に応じた外形標準課税


    • 2.1 銀行税(俗称)




  • 3 外形標準課税


    • 3.1 外形標準課税の概要




  • 4 申告・納税


  • 5 その他


  • 6 脚注





課税標準(原則)



  • 法人

    • 一般の法人:所得、清算所得
      • 資本金・出資金額が1億円を超える法人:外形標準課税(平成16年4月1日以降に開始する事業年度より適用:後述)


    • 電気供給業、ガス供給業、生命保険業及び損害保険業を営む法人:収入金額



  • 個人:前年中の事業の所得(290万円をこえる場合のみ)

    • 第1種事業

    • 第2種事業

    • 第3種事業




課税標準となる所得は、原則として所得税(個人事業主の場合)・法人税(法人の場合)の例によって算出する。但し、政策上・課税技術上の観点等から



  • 個人・法人の双方について、林業にかかる所得は非課税である。

  • 鉱業から生ずる所得も個人・法人とも非課税である(ただし、製錬は課税される)。

  • 個人および医療法人等の一部法人について、社会保険診療等にかかる収入・経費は所得の計算時に算入しない。

  • 個人について、事業主控除という年額290万円(事業所得の計算期間が1年に満たない場合は月割)の所得控除が設けられている。

  • 個人について、青色申告特別控除を認めない。

  • 法人について、課税された所得税額の損金算入を認めない。

  • 法人について、連結納税を認めない。


など、いくつかの例外がある。



課税標準の例外:事業の情況に応じた外形標準課税


一般の法人又は個人については、「事業の情況に応じ……資本金額、売上金額、家屋の床面積若しくは価格、土地の地積若しくは価格、従業員数等を課税標準とし、又は所得及び清算所得とこれらの課税標準とをあわせ用いることができる」こととされている(旧地方税法72条の19・地方税法72条の24の4)。 但し、このとき、通常の所得を課税標準とするときの租税負担と「著しく均衡を失することのないようにしなければならない」とされている(地方税法72条の22第9項)。


なお、事業の情況に応じない外形標準課税の導入に伴い、外形標準課税の対象となる法人に対してはこの例外は適用されないものとされた。



銀行税(俗称)


東京都が2000年4月に東京都における銀行業等に対する事業税の課税標準等の特例に関する条例で、大阪府が2000年6月に制定した、資金量5兆円以上の銀行業を営む法人に対する業務粗利益を課税標準とし3%の税率で課税するとする特例条例は、上記特例に基づくものである(報道等で俗に銀行税と呼ばれることがあるが、新たに法定外の税目を設けるものではないため、適当ではない)。但し大阪府は実際の課税には至っていない。


これに対して銀行側は、事業税は所得課税を常態とする応能課税であり上記特例はきわめて限定的に運用されるべきものであること・所得課税が適当でない「事業の情況」にないこと等を主張し、違憲・違法の課税であるとして条例の無効確認と税金の還付及び営業損害等の賠償を求め、東京都を提訴。当該裁判において東京高等裁判所において、事業税の応益性と「事業の情況」の存在を認めるものの、所得を課税標準にする場合に比して税負担が「著しく均衡を失」しており違法と判断する判決が出された[1]。これを契機として最高裁判所では和解交渉が行われ、税率を条例施行時に遡って0.9%に引き下げ、納付済みの事業税額との差額を還付し還付加算金を支払う条件で2003年10月8日に和解が成立した。


外形標準課税の対象となる法人は上記特例の対象から外れるところ、東京都・大阪府に本店を置く銀行業を営む法人の全てが1億円を超える資本金を持つことから、銀行業に対する外形標準課税を定めた条例は廃止ないし空文化される可能性が高い。


なお、銀行側は大阪府に対しても同様の訴訟を起こしていたが、2004年3月29日に大阪府議会で税率を東京都の和解内容に準じて0.9%に引き下げる条例が制定されたことなどから、同年5月18日、銀行側より訴訟の取下書が提出され終結した。



外形標準課税


もともと事業税は「所得」を基に税額が算定されていた。ところが、不況による税収の伸び悩みや地方財政の悪化から、平成15年度の税制改正により、一定の法人については、いわゆる外形標準課税が導入されることとなった。


課税サイドからみた外形標準課税のメリットは、赤字法人からも税収を上げることができるため、不況時にも一定の税収を見込むことができ都道府県財政が安定する点にある。実際に、黒字法人の割合が低水準(概ね30%強)で推移している一方で、地方税には応益税的な性質があるとされることから導入には一応の説得力がある。


納税者側からみたときのメリットとしては、税額に占める所得課税部分の割合が減少することから、黒字時には事業税の負担が従来より減少することが挙げられている。


デメリットとしては、赤字法人の多い中小企業・従業員数の多い鉄鋼業等の負担が重くなるとされること、以下のとおり税額の計算方法が複雑なことなどが指摘されている。


なお、事業税の原型であった戦前の営業税(国税)は、外形標準課税を採ったために、明治・大正期に商工業者による反対運動がしばしば発生したために、営業純益に対する課税に改正された経緯があった。



外形標準課税の概要



  • 資本金1億円超の法人が対象

  • 事業税及びその課税標準を3つに分割

    • 付加価値割の課税標準:各事業年度の付加価値額

      • 付加価値額 = 収益配分額 + 単年度損益 , 国外事業に帰属する付加価値額は控除される。

      • 収益配分額 = 報酬給与額 + 純支払利子 + 純支払賃借料 , 報酬給与額が収益配分額の70%超の法人は、雇用安定控除を行う。

      • 単年度損益 = 益金の額 - 損金の額



    • 資本割の課税標準:各事業年度の資本等の金額

      • 資本金等の金額 = 資本金(又は出資金)の金額 + (連結個別)資本積立金額


      • 持株会社については、資本金等の金額から(資本金等の金額×子会社株式の帳簿価額/総資産)を控除する。

      • 資本金等の金額が1,000億円超の法人については、課税標準を一定の方法で圧縮する。

      • 課税標準の上限は、1兆円とする。

      • 国外事業を行う法人については、国外における事業規模等を勘案して国内事業相当額のみに課税



    • 所得割の課税標準:各事業年度の所得及び清算所得



  • 標準税率

    • 付加価値割:0.48%

    • 資本割:0.2%

    • 所得割:2.9%(但し年400万円以下は1.5%、400万円超800万円以下は2.2%、800万円超は2.9%)



  • 制限税率:標準税率の1.2倍が上限



申告・納税



  • 個人事業税については、所得税の確定申告書を税務署に提出した場合は申告は不要で、都道府県から送付される納税通知書によって納める。

  • 法人事業税については、事業年度終了の翌日から2月以内に都道府県に申告書を提出し納税を行う。



その他




  • 税務署の調査により、所得税・法人税の修正申告等がなされた場合は、事業税の課税対象となった所得が変更されるため、法人の場合は1月以内に修正申告が必要となり、個人・法人ともに事業税を追加して納めることになる。

  • 個人事業税は、対象事業が限定列挙してあるため、どの事業に該当するのか、事業といえるかどうか等判断が難しい場合がある。(例えば請負と雇用の区別、不動産貸付業等)



脚注


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  1. ^ 東京高等裁判所平成15年1月30日判決。なお高橋滋「コラム(1) 東京都銀行税訴訟事件」水野忠恒・中里実・佐藤英明・増井良啓編『租税判例百選 第4版』(有斐閣、2005年)18頁参照。









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