J-PARC




J-PARC(ジェイパーク、Japan Proton Accelerator Research Complex)は、大強度陽子加速器施設である。高エネルギー加速器研究機構と日本原子力研究開発機構による共同プロジェクトで茨城県の原子力科学研究所内に位置する。リニアック、RCS(Rapid Cycling Synchrotron) 、MR(Main Ring) の3台の加速器からなる。


2007年度にファーストビームを発生、2008年12月より供用を開始した。




目次






  • 1 施設概要


  • 2 進展状況


  • 3 事故


  • 4 参考文献


  • 5 脚注


  • 6 関連項目


  • 7 外部リンク





施設概要








J-PARC中性子施設



  • 所在地 茨城県那珂郡東海村大字白方2番地4 日本原子力研究開発機構 原子力科学研究所

  • 常伝導・超伝導線型加速器(Linac)(全長450m)

  • 3GeV 陽子シンクロトロン(RCS)(周長300m)

  • 50GeV 陽子シンクロトロン(Main Ring: MR)(周長1,567.5m)

  • 付帯実験設備として、MLF(物質生命科学実験施設)、原子核素粒子実験施設(ハドロン実験施設)、ニュートリノ実験施設が建設され、2009年4月までに全施設でのビーム発生を確認。大学共同利用実験等に供されている。

  • MLFは特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律に云う特定中性子線施設であり、 総合科学研究機構が5つのビームラインの利用審査等を行っている。


  • ADS(核変換実験施設)についても計画中であり、放射性廃棄物の消滅処理に向けた基礎研究を目指している。

  • 物質生命科学実験施設では強力な中性子源、およびミュオン源が稼働しており、前者には中性子を利用したタンパク質などの構造・機能解析用のビームラインを備えている。またミュオンスピン回転を用いた超伝導や磁性材料の研究、電池材料や水素貯蔵材料の基礎研究等が行われている。

  • 物質・生命科学実験施設(MLF)に世界初のパルス中性子イメージング専用装置であるエネルギー分析型中性子イメージング装置「螺鈿」が建設された[1]

  • 同種の中性子実験施設として、米国SNS(Spallation Neutron Source)が構築中であり、J-PARCと競っている。

  • ハドロン実験施設では、高エネルギー陽子から生成されたπ中間子・K中間子を用いた原子核・素粒子物理実験が行われており、ニュートリノ実験施設ではスーパーカミオカンデと連携した素粒子(ニュートリノ)物理実験T2Kなどが進行中である。

  • 建設費に約1,500億円投じられた。現在、施設全体の運転・維持管理に年間およそ130億円が支出されている。



進展状況




  • 2010年2月24日: J-PARC加速器から発射したニュートリノをスーパーカミオカンデにて初検出に成功した[2]

  • 2009年11月22日: T2K実験前置ニュートリノ検出器でニュートリノの初観測に成功した[3]

  • 2009年4月23日: J-PARCニュートリノ実験施設でニュートリノビームの生成を開始した[4]

  • 2009年1月27日: J-PARC 50GeVシンクロトロンでの30GeV陽子ビーム加速とハドロン実験施設への入射に成功した[5]

  • 2008年12月23日: J-PARC 50GeVシンクロトロンで周回陽子ビームを30GeVのエネルギーまで加速させダンプへ取り出すことに成功した[6]

  • 2008年5月22日: J-PARC 50GeVシンクロトロンへの3GeV陽子ビームの入射及び周回に成功した[7]

  • 2007年10月31日: J-PARC 3GeVシンクロトロンで3GeVのエネルギーまで陽子ビームを加速させることに成功した[8]

  • 2007年10月26日: J-PARC 3GeVシンクロトロンへのビーム入射及び周回に成功した[9]

  • 2007年1月24日: J-PARCリニアック(初段加速器)で負イオン化した水素ビームを所期の加速エネルギー目標値181MeVまで加速させることに成功した[10]



事故



2013年5月23日11時55分、ハドロン実験施設において、装置の誤作動により放射性物質が漏れる事故が発生、作業していた研究者6人の被曝が確認され、施設外にも漏洩した。24日22時40分になって関係機関への通報がなされた[11][12]。25日に茨城県と東海村、水戸市、日立市など7市町村が立ち入り調査を実施、構造上の不備を指摘し対応の遅さを批判した[13][14]



参考文献



  • 永宮 正治 (2001), “大強度陽子加速器プロジェクト”, 日本原子力学会誌 43, http://jlc.jst.go.jp/DN/JALC/00151893421 


脚注


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  1. ^ 中性子ラジオグラフィの現状と今後, http://www.jsndi.jp/bulletin/J_01_Jan16.html 


  2. ^ “スーパーカミオカンデでJ-PARC加速器からのニュートリノの初検出に成功” (プレスリリース), KEK, (2010年2月25日), http://www2.kek.jp/ja/news/press/2010/T2KfirstEvent.html 2017年6月24日閲覧。 


  3. ^ “T2K実験前置ニュートリノ検出器でニュートリノの初観測に成功” (プレスリリース), KEK, (2009年11月24日), http://www2.kek.jp/ja/news/press/2009/J-PARCT2K2.html 2017年6月24日閲覧。 


  4. ^ “J-PARCニュートリノ実験施設でニュートリノビーム生成開始” (プレスリリース), KEK, (2009年4月23日), http://www2.kek.jp/ja/news/press/2009/J-PARCT2K.html 2017年6月24日閲覧。 


  5. ^ “J-PARC最終段加速器での陽子ビーム加速とハドロン実験施設への入射に成功” (プレスリリース), KEK, (2009年1月28日), http://www2.kek.jp/ja/news/press/2009/J-PARC50GeV2.html 2017年6月24日閲覧。 


  6. ^ “J-PARCで陽子ビームを30GeVまで加速に成功”. KEK (2008年12月24日). 2017年6月24日閲覧。


  7. ^ “J-PARC 50GeVシンクロトロンへのビーム入射及び周回に成功” (プレスリリース), KEK, (2008年5月23日), http://www2.kek.jp/ja/news/press/2008/J-PARC50GeV.html 2017年6月24日閲覧。 


  8. ^ “J-PARC3GeVシンクロトロンで所期性能のエネルギー3GeVを達成” (プレスリリース), KEK, (2007年10月31日), http://www2.kek.jp/ja/news/press/2007/J-PARC3GeV2.html 2017年6月24日閲覧。 


  9. ^ “J-PARC3GeVシンクロトロンへのビーム入射及び周回に成功” (プレスリリース), KEK, (2007年10月29日), http://www2.kek.jp/ja/news/press/2007/J-PARC3GeV.html 2017年6月24日閲覧。 


  10. ^ “J-PARCリニアックが所期のビーム加速エネルギー目標値を達成- 181MeVまでのビーム加速に成功 -” (プレスリリース), KEK, (2007年1月24日), http://www2.kek.jp/ja/news/press/2007/J-PARCLinac2.html 2017年6月24日閲覧。 


  11. ^ J-PARC ハドロン実験施設におけるトラブルについて 平成25年5月25日


  12. ^ J-PARC ハドロン実験施設におけるトラブルについて 平成25年5月25日追加資料(PDF)


  13. ^ “放射能漏れ:茨城県が立ち入り調査 排気ファン作動に不満”. 毎日新聞 (2013年5月25日). 2013年7月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月7日閲覧。


  14. ^ “機構、今度は通報遅れ 被ばく55人か”. 東京新聞 (2013年5月25日). 2016年8月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月7日閲覧。




関連項目



  • 中性子回折

  • 中間子工場

  • SPring-8

  • JRR-3

  • 核変換



外部リンク


  • J-PARC|大強度陽子加速器施設










座標: 北緯36度27分34秒 東経140度35分51秒 / 北緯36.459527度 東経140.597491度 / 36.459527; 140.597491







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