ハンス・ケルゼン











ウィーン大学にあるケルゼンの頭像


ハンス・ケルゼン(Hans Kelsen、1881年10月11日 - 1973年4月19日)は、オーストリア出身の公法学者・国際法学者。マルガレーテ夫人の甥(義理の甥)にピーター・ドラッカーがいる。


ケルゼン家はウクライナのブロディからチェコに移住した東欧系ユダヤ人の家系である。




目次






  • 1 人物


  • 2 法理論


  • 3 主要著作


  • 4 脚注


  • 5 関連項目





人物


彼は1881年にプラハで生まれたが、彼が2歳の時に一家はウィーンへ移った。ギムナジウムを卒業した後、ウィーン大学で法学を専攻し、1906年、学士号を取得した。


1911年に彼は公法と法哲学の分野において大学教員の資格を得、最初の著作となる『国法学の主要問題』(原題:Hauptprobleme der Staatsrechtslehre)を書き上げた。1912年にマルガレーテ・ボンディ(Margarete Bondi)と結婚し、2人の娘をもうけた。


1919年に、彼はウィーン大学で公法・行政法の教授となった。ウィーンでは公法に関する専門誌を創刊し、自ら編集にあたった。同時期、時のオーストリア首相カール・レンナーの要請により、オーストリア共和国憲法を起草し、1920年にはこれを制定させた。今日のオーストリア憲法にも、ケルゼンの影響は強く残っている。また、この頃彼はオーストリア憲法裁判所の終身判事に就任している。1925年、彼は『一般国家学』(原題:Allgemeine Staatslehre)をベルリンで出版した。


1930年にはケルン大学へ招聘された。1933年、ナチスがドイツで権力を握ると、彼は職を辞し、1940年までジュネーヴにある研究機関(現在の国際・開発研究大学院)で国際法を教えた。また、チェコスロバキアがドイツに併合されるまでは、彼はプラハ・ドイツ大学の教授でもあった。その後、1934年には『純粋法学』(原題:Reine Rechtslehre)の第一版を出版した。一方、ジュネーヴにおいては彼の主要な関心はすでに国際法に移りつつあった。


1940年になると彼はアメリカへ移り、1942年にはハーバード・ロー・スクールでオリバー・ウェンデル・ホームズ記念講義を担当した。1945年、彼はカリフォルニア大学バークレー校で政治学の教授になった。この期間中、彼は国際法と国際連合のような国際組織との関係について研究した。1953年から1年間、彼はアメリカ海軍戦略大学で、客員教授として国際法を教えた。


ケルゼンの主な業績は近代のいわゆる「ヨーロッパ型憲法モデル」の再検討である。殊にオーストリア第一共和国で採用されケルゼン自身も審理に関わった憲法裁判所の制度は多くの国の特別憲法裁判所のモデルとなり、ドイツ連邦共和国・イタリア・スペイン・ポルトガルをはじめ中欧から西欧にかけての国で採用された。このシステムにおいては、アメリカ型の違憲審査制とは大きく異なり、憲法裁判所が憲法解釈における唯一の権威者である。



法理論


ケルゼンは20世紀において最も卓越した法学者の一人とされている[1]。法実証主義を最も厳密な形で採用し、科学的正確さを追求した彼の法理論、いわゆる「純粋法学」は、根本規範と呼ばれる理論に基づいている。これは憲法や一般法など、全ての法の上位にある原理として仮定されるものである。


彼の理論を引き継いだ公法学者は世界中にいる。彼の弟子たちは、純粋法学を広める学派を形成した。オーストリアのウィーンや、チェコスロバキアのブルノの学派が著名である。英語圏ではH.L.A.ハートやジョセフ・ラズが、部分的には異なる理論を形成しているものの、ケルゼンの影響を強く受けた学者として知られている。


主要な論敵であったカール・シュミットは、ケルゼンから悪影響を受けている[要検証]。翻ってケルゼンは、国家の神聖化につながる理論は主権国家間に自然に生じた国際法に対する主権の優位性を正当化してしまう、と書いている。ケルゼンにとって、主権とは理論的な概念ではなかった。彼はこう記している。「意図して個人をその決定に服せしめる以外の何物でもない主権概念から、人間は離脱しうる」と。



主要著作



  • 『法と国家』(鵜飼信成訳、東京大学出版会、1970年)

  • 『一般国家学』(清宮四郎訳、岩波書店、1971年)

  • 『純粋法学』(横田喜三郎訳、岩波書店、1973年/長尾龍一訳、岩波書店、2014年〔第二版〕)

  • 『ダンテの国家論』(長尾龍一訳、木鐸社、1977年)

  • 『法と国家の一般理論』(尾吹善人訳、木鐸社、1991年)

  • 『社会学的国家概念と法学的国家概念』(法思想21研究会訳、晃洋書房、2001年)

  • 『デモクラシーの本質と価値』(西島芳二訳、岩波文庫、1948年・1966年改版/長尾龍一・植田俊太郎訳、岩波文庫、2015年[※『民主主義の本質と価値』と改題されている])



脚注


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  1. ^ Dreier, Horst (1993), "Hans Kelsen (1881-1973): 'Jurist des Jahrhunderts'?", in Heinrichs, Helmut; Franzki, Harald; Schmalz, Klaus et al., Deutsche Juristen jüdischer Herkunft, Munich: C. H. Beck, pp. 705–732, ISBN 3-406-36960-X.




関連項目







  • 法学

  • 法学方法論

  • 法哲学

  • 憲法

  • ドイツ法

  • オーストリア法

  • アメリカ法

  • 純粋法学

  • 法実証主義












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