居飛車





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居飛車(いびしゃ)は、将棋の二大戦法の一つ。序盤において、右翼にある飛車の駒を定位置の筋から横へ動かさないで攻めるもの。この反対は振り飛車で、飛車を左翼へ展開する。


両対局者が共に居飛車を採用する相居飛車と振り飛車を相手にする対振り飛車(対抗型)に大別される。




目次






  • 1 相居飛車


  • 2 対振り飛車


  • 3 居飛車の戦法


    • 3.1 相居飛車


    • 3.2 対抗型




  • 4 居飛車の囲い


    • 4.1 相居飛車


    • 4.2 対抗型




  • 5 居飛車党 


    • 5.1 主な居飛車党の棋士




  • 6 脚注


  • 7 参考文献


  • 8 関連項目





相居飛車


相居飛車は、互いに飛車を右翼から動かさずに同じ形で駒組が始まるので、相手に出遅れるとたちまち不利に陥りやすい。例えば、相手が飛車先の歩兵を進めてきたとき、放っておくと相手だけが飛車先の歩交換を実現して自分が不利になってしまうことが多い。したがって、相手の歩交換を阻止するために銀将や角行で受けるか(この場合は後ほど自分が飛車先の歩兵を進めていけば相手も同じように受けることが想定される)、あるいは自分も歩交換できるようにすぐに飛車先の歩を進めて行くかという2つの選択肢が有力となる。


このように、相居飛車は双方が駆け引きをしながら相手の駒組に歩調を合わせて自分の駒組をすることになり、必然的に両者の駒組は似通ったものとなる。その結果、相居飛車の最序盤で先手・後手が初手から互いに損のない手を指していくと、大半が矢倉・角換わり・相掛かり・横歩取りのいずれか、あるいはそのバリエーションと言える形になる。ただしなお、いずれにも分類できない戦型は相居飛車力戦と呼ばれる。


































相居飛車四大戦型
戦型名 矢倉戦 角換わり 相掛かり 横歩取り
飛車先
銀将で受けて矢倉囲いを目指す[1]
銀将(角交換前は角行)で受ける
受けずに相互に歩交換を仕掛ける
受けずに相互に歩交換をする
角道
開けたらすぐ銀将などで閉じる[2]
開けて角交換をする
しばらく開けない[3]
開けて歩兵を横の飛車で取らせる
最序盤の例






△持ち駒 なし










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▲持ち駒 なし









△持ち駒 角










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▲持ち駒 角









△持ち駒 歩










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▲持ち駒 歩









△持ち駒 歩2










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▲持ち駒 歩3




これらの戦型ごとに様々な戦法が開発されている。相居飛車の戦法には、その戦型ならば先手でも後手でも採用可能なものもあれば、先手のみあるいは後手のみの戦法もある[4]


矢倉戦や角換わりでは、銀将金将を縦に並べて相手の飛車先をしっかり受け止める矢倉囲い系統の囲い[5]を左翼に構築し、ここに玉将を囲うことが多い[6]。一方、相掛かりや横歩取りでは、飛車先を受けないために急に戦いが始まることに加えて、飛車先交換を終えて自由になった相手の飛車が縦横無尽に走って様々な場所から攻撃を仕掛けてくるため、玉将を中央付近に置いたまま自陣全体を素早く守れる中住まい系統の囲いが使用されることが多い。



対振り飛車


振り飛車に対して、居飛車側としては、簡易な囲いのままですぐに攻め込む急戦か、振り飛車側と同等あるいはそれ以上に固い囲いを築いてから攻め込む持久戦かを選択できる。急戦については、振り飛車側の飛車を振る筋に応じて様々な戦法がある。持久戦の場合はどのように攻めるかではなくどのように固く玉将を囲うかに主眼が置かれることになるので、守りの戦法たる囲いの名前がそのまま狭義の戦法の名前となる。











△四間飛車 なし










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▲居飛車 なし
急戦の例(斜め棒銀)









△向かい飛車 なし










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▲居飛車 なし
持久戦の例(穴熊)




囲いについては、居飛車側も振り飛車側も飛車と反対側(居飛車は左翼、振り飛車は右翼)に玉将を移動し、相手の飛車が横から攻めてくるため、横からの攻めに強い形の囲いを構築するのが一般的である。居飛車側の囲いは、急戦ならば固くはないが短手数で囲える舟囲い系統の囲い、持久戦ならば手数はかかるが固い穴熊系統の囲いが選択されることが多い。振り飛車側の囲いは、短手数で囲えて固い美濃囲い系統の囲いが主に使われる。この他、居飛車側が美濃囲いを構築する左美濃や振り飛車側が穴熊囲いを構築する振り飛車穴熊などもある。



居飛車の戦法



相居飛車



  • 矢倉戦

    • 相矢倉:加藤流、4六銀・3七桂型、脇システム、矢倉棒銀、森下システム、早囲い、雀刺し、四手角、三手角

    • 急戦矢倉:米長流急戦矢倉(田丸流)、阿久津流急戦矢倉(中原流、郷田流、渡辺流)、矢倉中飛車、右四間飛車(腰掛け銀型)、△6二飛戦法、原始棒銀、カニカニ銀

    • 変化型:▲3五歩早仕掛け、雁木、陽動振り飛車、無理矢理矢倉




  • 角換わり


    • 腰掛け銀:相腰掛け銀、後手棒銀

    • その他:早繰り銀、棒銀、筋違い角


    • 後手一手損角換わり(角換わりとは独立した戦型として扱われることもある)




  • 相掛かり

    • 相居飛車型:棒銀、塚田スペシャル、新旧対抗型、中原流早繰り銀、中原飛車(5六飛)、飛車先交換腰掛け銀・鎖鎌銀

    • 変化型:ひねり飛車(縦歩取り)




  • 横歩取り


    • 横歩取り△3三角:空中戦法(内藤流)、中原流、中座飛車(横歩取り△8五飛)、3三飛成戦法(竹部流)

    • その他:横歩取り△3三桂、横歩取り△2三歩、横歩取り△4五角、相横歩取り




対抗型


  • 対中飛車急戦

    • 対ノーマル中飛車:加藤流袖飛車、5七金戦法

    • 対ゴキゲン中飛車:▲5八金右超急戦、超速▲3七銀、丸山ワクチン[7]



  • 対四間飛車急戦


    • 左銀急戦:山田定跡、4六銀左戦法、4五歩早仕掛け、鷺宮定跡、準急戦(▲3六銀型)

    • その他:棒銀、4六銀右戦法、右四間飛車、鳥刺し、飯島流引き角戦法



  • 対三間飛車急戦

    • 4五歩早仕掛け、4六銀急戦、棒金(対石田流)


  • 対向かい飛車急戦

    • 棒銀、4六銀(左銀)戦法





居飛車の囲い



相居飛車


  • 矢倉・角換わりの囲い


    • 矢倉囲い系統:金矢倉、銀矢倉、総矢倉、片矢倉(天野矢倉・半矢倉)、へこみ矢倉、菱矢倉、流れ矢倉、菊水矢倉(しゃがみ矢倉)、富士見矢倉、土居矢倉、高矢倉、角矢倉、矢倉穴熊、カブト囲い

    • その他:雁木囲い、右玉、カニ囲い



  • 相掛かり・横歩取りの囲い


    • 中住まい系統:中住まい、中原囲い、イチゴ囲い

    • その他:カタ囲い




対抗型


  • 急戦

    • 舟囲い系統:舟囲い(7九銀型・6八銀型・5七銀左型)、箱入り娘、セメント囲い、二枚囲い、elmo囲い


  • 持久戦


    • 居飛車穴熊系統:四枚穴熊(7八金型)、6七金型穴熊、田尻穴熊、松尾流穴熊、ビッグ4、銀冠穴熊


    • 左美濃系統:左美濃、天守閣美濃、四枚美濃、銀冠、米長玉銀冠

    • 位取り系統:5筋位取り、玉頭位取り


    • 中段玉系統:空中楼閣、四段端玉

    • その他:串カツ囲い、ミレニアム囲い(カマクラ・カマボコ・トーチカとも)、地下鉄飛車




居飛車党 


居飛車を主に採用する棋士は「居飛車党」と呼ばれる。



主な居飛車党の棋士




  • 木村義雄 - 角換わり将棋における「木村定跡」を開発。


  • 山田道美 - 対振り飛車研究の第一人者で、打倒大山康晴を掲げ「山田定跡」を完成させた。


  • 加藤一二三 - 棒銀、矢倉▲3七銀戦法、対振り飛車における居飛車舟囲い急戦の礎を築き上げた。


  • 米長邦雄 - 米長流急戦矢倉など、矢倉の研究において後進の棋士たちに大きな影響を与えた。


  • 中原誠 - 横歩取り中原囲い、中原流相掛かりは有名。


  • 田中寅彦 - 居飛車穴熊、飛車先不突矢倉、無理矢理矢倉など序盤戦術の躍進に貢献した。


  • 谷川浩司 - 角換わり腰掛け銀と切れ味鋭い終盤の寄せを得意とする。


  • 森下卓 - 相矢倉の革命的戦法である森下システムの創始者。


  • 丸山忠久 - 横歩取り8五飛と角換わりを原動力にして名人位を奪取した。


  • 郷田真隆 - 初手に飛車先の歩を突くことが多い居飛車の本格派。


  • 木村一基 - 激しい将棋でも徹底して受ける棋風。


  • 渡辺明 - 居飛車穴熊を得意とし、対振り飛車以外の戦形でもしばしば用いる。


  • 清水市代 - 相掛かりや急戦、右四間飛車など力戦調の将棋を得意とする。



脚注





  1. ^ 矢倉戦という名称は元々両対局者が矢倉囲いを完成させて戦っていたことに由来する。しかし、現在では相手の矢倉囲いを阻止するための戦法が進歩した結果、最序盤が従来の矢倉戦と同様の進行(飛車先を受けるために銀将を上がり角道を止める)であっても実際に両者が矢倉囲いを構築しない(できない)ことが多い。このような場合も一般的には矢倉戦の戦型に含める。また、矢倉囲いは矢倉戦に限って現れるということもなく、例えば角交換をしてから矢倉囲いを構築した場合には角換わりの戦型に分類される。


  2. ^ 先手が5手目に7七銀と上がることで角道を閉じると同時に飛車先も受けることができる(いわゆる矢倉旧24手組)。一時期、5手目にまずは歩兵で角道を閉じておき、飛車先を受ける銀将を後回し(もちろん最終的には受ける)にする駒組(いわゆる矢倉新24手組)が流行した。しかし、居角左美濃急戦戦法が考案されて以降は矢倉新24手組で矢倉囲いに組むことは極めて困難になり、再び矢倉旧24手組が定跡となっている。


  3. ^ 最序盤は閉じたまま進行するが、最終的には角行の活用のために角道を開けるのが普通である。なお、最初から角道を開けた横歩取り模様から横歩を取らずに相掛かりになることもある。


  4. ^ 一例を挙げれば、角換わり早繰り銀戦法は先手でも後手でも使える戦法だが、横歩取り8五飛戦法は後手のみが使える戦法である。


  5. ^ なお、角換わりでは角交換がされているため、通常の矢倉囲いとは異なり右金を二段目にとどめて角行の打ち込みを警戒するカブト矢倉や平矢倉などの形が頻繁に使われる。また、矢倉戦では銀将の代わりに角行で飛車先を受ける雁木囲いが使われることもある。


  6. ^ 左翼で飛車先を受けつつあえて玉将を右翼に配置する右玉が使われることもある。


  7. ^ 超速▲3七銀や丸山ワクチンには急戦・持久戦どちらの変化もある。




参考文献




  • 塚田泰明監修、横田稔著『序盤戦! 囲いと攻めの形』、高橋書店、1997年

  • 原田泰夫 (監修)、荒木一郎 (プロデュース)、森内俊之ら(編)、2004、『日本将棋用語事典』、東京堂出版 .mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit}.mw-parser-output .citation q{quotes:"""""""'""'"}.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/65/Lock-green.svg/9px-Lock-green.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg/9px-Lock-gray-alt-2.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/aa/Lock-red-alt-2.svg/9px-Lock-red-alt-2.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output .cs1-subscription,.mw-parser-output .cs1-registration{color:#555}.mw-parser-output .cs1-subscription span,.mw-parser-output .cs1-registration span{border-bottom:1px dotted;cursor:help}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/4c/Wikisource-logo.svg/12px-Wikisource-logo.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output code.cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:inherit;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;font-size:100%}.mw-parser-output .cs1-visible-error{font-size:100%}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#33aa33;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-subscription,.mw-parser-output .cs1-registration,.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left,.mw-parser-output .cs1-kern-wl-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right,.mw-parser-output .cs1-kern-wl-right{padding-right:0.2em}
    ISBN 4-490-10660-2


  • 上野裕和、2018、『将棋・序盤完全ガイド 振り飛車編(増補改訂版)』、マイナビ出版


関連項目


  • 将棋の戦法一覧




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