安倍晋三
日本の政治家 あべ しんぞう | |
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内閣総理大臣就任に際して公表された肖像写真(2012年撮影) | |
生年月日 | (1954-09-21) 1954年9月21日(64歳) |
出生地 | 日本 東京都新宿区 |
出身校 | 成蹊大学法学部政治学科卒業 |
前職 | 安倍晋太郎(実父)秘書官 |
現職 | 内閣総理大臣 自由民主党総裁 衆議院議員 |
所属政党 | 自由民主党(細田派) |
称号 | 政治学士(成蹊大学・1977年) |
配偶者 | 安倍昭恵 |
親族 | 安倍慎太郎(曾祖伯父) 安倍寛(祖父) 岸信介(祖父) 佐藤栄作(大叔父) 安倍晋太郎(父) 安倍洋子(母) 安倍寛信(兄) 岸信夫(弟) |
第96-98代 内閣総理大臣 | |
内閣 | 第2次安倍内閣 第2次安倍改造内閣 第3次安倍内閣 第3次安倍第1次改造内閣 第3次安倍第2次改造内閣 第3次安倍第3次改造内閣 第4次安倍内閣 第4次安倍改造内閣 |
在任期間 | 2012年12月26日 - 現職 |
天皇 | 今上天皇(明仁) |
第90代 内閣総理大臣 | |
内閣 | 第1次安倍内閣 第1次安倍改造内閣 |
在任期間 | 2006年9月26日 - 2007年9月26日 |
天皇 | 今上天皇(明仁) |
第72代 内閣官房長官 | |
内閣 | 第3次小泉改造内閣 |
在任期間 | 2005年10月31日 - 2006年9月26日 |
衆議院議員 | |
選挙区 | (旧山口1区→) 山口4区 |
当選回数 | 9回 |
在任期間 | 1993年7月19日 - 現職 |
安倍 晋三(あべ しんぞう、1954年(昭和29年)9月21日 - )は、日本の政治家。自由民主党所属の衆議院議員(9期)、第90代・第96代・第97代・第98代内閣総理大臣、第21代・第25代自由民主党総裁。
目次
1 来歴
1.1 政界入りまで
1.1.1 生い立ち
1.1.2 学生時代
1.1.3 会社員時代
1.2 政界入り
1.2.1 秘書時代
1.2.2 衆議院議員
1.2.3 内閣官房副長官
1.2.4 自民党幹事長
1.2.5 内閣官房長官
1.3 最初の内閣総理大臣就任
1.3.1 第1次安倍内閣
1.3.2 参議院議員選挙(2007年)での敗北
1.3.3 体調の悪化と総辞職
1.3.3.1 突然の辞任への反応
1.3.3.2 辞任の原因
1.4 内閣総理大臣退任後
1.4.1 体調回復と活動の再開
1.4.2 2度目の総裁就任
1.5 内閣総理大臣に再就任
1.5.1 参議院議員選挙(2013年)での勝利
1.5.2 2020年東京オリンピック招致
1.5.3 参議院議員選挙(2016年)での勝利
1.5.4 東京都議会議員選挙(2017年)での敗北
1.5.5 衆議院議員総選挙(2017年)での勝利
2 政見・政策
2.1 皇室
2.2 国家観
2.3 地方自治
2.4 外国人政策
2.5 捕鯨問題
2.6 憲法
2.7 外交
2.8 安全保障
2.8.1 普天間基地移設問題
2.9 尖閣諸島問題
2.9.1 日台漁業交渉
2.10 教育
2.11 民法論議・家族制度
2.11.1 夫婦同姓規定
2.11.2 離婚後300日規定
2.11.3 婚外子規定
2.11.4 性的少数者対策
2.12 公務員改革
2.13 労働政策
2.13.1 TPP問題
2.13.2 労働市場の構造改革(日本版「ワッセナー合意」)
2.14 治安政策
2.14.1 特定秘密の保護に関する法律
2.15 社会保障
2.15.1 中国残留孤児
2.15.2 年金問題
2.15.3 介護施策について
2.15.4 子ども手当について
2.15.5 医療制度
2.16 経済政策
2.16.1 原発政策
2.17 財政再建
2.17.1 消費税増税
3 歴史観
3.1 安倍談話
3.2 村山談話
3.3 慰安婦問題
3.3.1 河野談話
3.3.2 日米首脳会談での言及
3.3.3 日韓合意
3.4 靖国神社参拝
3.4.1 首相在任中の靖国神社初参拝
3.4.2 世論調査・ネット調査
3.4.3 批判
4 エピソード
4.1 政治資金
4.2 後援会事務所等への被害
4.3 災害への対応について
4.4 福島第一原発事故
4.5 財務省の決裁文書改竄問題
5 発言
5.1 原子爆弾の保有・使用
5.2 民主党を「中国の拡声器」
5.3 辛光洙の保釈署名者の土井たか子と菅直人に対する不適切発言
5.4 日韓図書協定
5.5 2015年衆議院予算委員会において野次「日教組どうするの!」
5.6 最高責任者に関する発言
5.7 自衛隊について「わが軍」と発言
5.8 衆議院特別委員会において野次「早く質問しろよ」「大げさなんだよ」
5.9 「私は立法府の長」発言
5.10 「デフレ脱却していないがもはやデフレではない」発言
5.11 「訂正でんでんには当たらない」発言
5.12 「エンゲル係数上昇は食生活の変化」発言
5.13 「総理なので森羅万象すべて担当している」発言
6 人物
6.1 人物像
6.2 関係団体
6.3 交流関係
6.3.1 友人
6.4 家族・親族
6.5 系譜
6.5.1 安倍家
6.5.2 佐藤家
6.5.3 系図
7 受賞・栄典
8 著作
9 出演番組
9.1 テレビ
9.1.1 インターネット動画配信
9.2 ラジオ
10 所属団体
11 脚注
11.1 注釈
11.2 出典
12 参考文献
13 関連項目
14 外部リンク
来歴
政界入りまで
生い立ち
1954年(昭和29年)9月21日に、当時毎日新聞の記者であった安倍晋太郎と、その妻である洋子の次男として東京都で生まれる。本籍地は山口県大津郡油谷町(現:長門市)である。父方の祖父は衆議院議員の安倍寛、母方の祖父は後の首相・岸信介で、大叔父には後の首相・佐藤栄作がいる、政治家一族であり、安倍は「幼い頃から私には身近に政治がありました」と回想している[1]が、幼い頃は野球選手やテレビを見て刑事になることに憧れていた[2]。
学生時代
成蹊小学校、成蹊中学校、成蹊高等学校を経て、成蹊大学法学部政治学科を卒業した[3]。
小学4年生から5年生にかけての、1964年から2年間は平沢勝栄が家庭教師についていた[1][4]。高校でのクラブは地理研究部に所属[5]。高校卒業後成蹊大学に進み、佐藤竺教授のゼミに所属して行政学を学ぶ。大学ではアーチェリー部に所属し、準レギュラーだった[6]。大学生の頃は人付き合いが良く、大人しく真面目だったという[5]。1977年春に渡米し、カリフォルニア州ヘイワードの英語学校に通うが、日本人だらけで勉強に障害があると判断して通学を止め、その後イタリア系アメリカ人の家に下宿しながらロングビーチの語学学校に通った[7]。秋に南カリフォルニア大学への入学許可が出され留学した[8][要出典]。
会社員時代
1979年(昭和54年)4月に帰国し、神戸製鋼所に入社。ニューヨーク事務所、加古川製鉄所、東京本社で勤務した[1]。加古川製鉄所での経験は、「私の社会人としての原点[9]」、あるいは「私の原点[10]」だったと回顧している。
政界入り
秘書時代
神戸製鋼所に3年間勤務した後、1982年(昭和57年)から当時外務大臣に就任していた父・晋太郎の秘書官を務める[11][12][13]。1987年(昭和62年)6月9日、当時森永製菓社長だった松崎昭雄の長女で電通社員の昭恵と新高輪プリンスホテルで結婚式を挙げた。媒酌人は福田赳夫夫妻が務めた[14]。
1987年、参議院議員・江島淳の死去に伴う補欠選挙に立候補する意思を示したが、宇部市長・二木秀夫が出馬を表明したことから晋太郎に断念するよう説得され立候補を見送った[15]。
衆議院議員
1991年(平成3年)に総裁候補の最有力と目されていた父・晋太郎が急死。1993年(平成5年)に父の地盤を受け継ぎ、第40回衆議院議員総選挙に山口1区から出馬し初当選(当選同期に浜田靖一・田中眞紀子・熊代昭彦・岸田文雄・塩崎恭久・野田聖子・山岡賢次・江崎鉄磨・高市早苗らがいる)。当選後はかつて父・晋太郎が会長を務めた清和政策研究会に所属する(当時の会長は三塚博)[要出典]。1994年、羽田内閣施政下、社会党の連立離脱を期に野党自民党が社会党との連立政権樹立を目指して作った超党派グループ「リベラル政権を創る会」に参加[16]。首班指名選挙では村山富市に投票し自社さ連立政権・村山内閣樹立に貢献[16]。1995年(平成7年)の自民党総裁選では小泉純一郎の推薦人の一人になった[17]。1999年、衆議院厚生委員会理事に就任[3]。
内閣官房副長官
派閥領袖の森喜朗首相が組閣した2000年(平成12年)の第2次森内閣で、小泉純一郎の推薦を受け[18]、政務担当の内閣官房副長官に就任。第1次小泉内閣でも再任した。
2002年(平成14年)、水野賢一が外務大臣政務官在任中に台湾訪問を拒否され同辞任した際も理解を示し擁護、小泉首相の北朝鮮訪問に随行し、小泉首相と金正日総書記との首脳会談では「安易な妥協をするべきではない」と強硬論を繰り返し主張した。拉致被害者5人の帰国は実現したものの、この日本人拉致問題は日本側の納得する形では決着せずに難航した。内閣官房参与の中山恭子と共に北朝鮮に対する経済制裁を主張し、拉致被害者を北朝鮮に一時帰国させる方針にも中山と共に頑強に反対した(この拉致問題への対応により、内閣官房長官だった福田康夫との関係に亀裂が入ったとされる)[18]。西岡力は、対話路線などの慎重論を唱える議員が多かった中で、安倍の姿勢は多くの支持を得たと述べている[19]。
また、北朝鮮対策として通信傍受法の要件緩和・対象拡大を主張した[20]。
自民党幹事長
2003年(平成15年)9月、衆議院解散を控える中で自民党の選挙の顔となる幹事長である山崎拓のスキャンダルが持ち上がったため、小泉は後任幹事長として安倍を抜擢した。閣僚も党の要職も未経験であった安倍の幹事長就任は異例であり、事前には筆頭副幹事長もしくは外務大臣への就任が有力視されていたため、小泉の「サプライズ人事」として注目を集めた。また、自民党は総幹分離の原則が長く続いており、総裁派閥幹事長は1979年の大平正芳総裁時代の斎藤邦吉幹事長以来24年ぶりであった。11月投票の第43回総選挙で与党は安定多数の確保に成功したが、自民党単独では選挙前の過半数から半数割れとなった。ただし前回選挙からは当選者増でもあり、幹事長に留まる。
幹事長時代には自民党内で恒常化していた「餅代」「氷代」(派閥の長が配下の者に配る活動資金)の廃止、自民党候補者の公募制の一部導入など党内の各種制度の改正を行った。2004年(平成16年)4月の埼玉8区補欠選挙では、自民党史上初の全国的な候補者公募を実施した(公募に合格した柴山昌彦が当選)。
同年夏の参議院選挙では、目標の51議席を下回れば「一番重い責任の取り方をする」と引責辞任を示唆。結果は49議席で、しばらく現職に留まった後で辞任した。同年9月から後任の幹事長・武部勤の強い要請を受ける形で党幹事長代理に就任した。幹事長経験者の幹事長代理就任も異例の事であった。
2004年、党改革推進本部長に就任[3]。
内閣官房長官
2005年10月31日付で発足した第3次小泉改造内閣で内閣官房長官として初入閣。2006年9月1日に総裁選への出馬を表明。憲法改正や教育改革、庶民増税を極力控えた財政健全化、小泉政権の聖域なき構造改革に引き続き取り組む方針を示す。
最初の内閣総理大臣就任
2006年9月20日、小泉の任期満了に伴う総裁選で麻生太郎、谷垣禎一を大差で破って自由民主党総裁に選出、9月26日の臨時国会において内閣総理大臣に指名される。戦後最年少で、戦後生まれとしては初めての内閣総理大臣であった。
第1次安倍内閣
就任表明では、冒頭に小泉構造改革を引継ぎ加速させる方針を示し[注 1]、国家像として「美しい国」を提示した。
安倍は小泉前首相の靖国参拝問題のために途絶えていた中国、韓国への訪問を表明。2006年10月に就任後の初外遊先となった中国・北京で胡錦濤国家主席と会談、翌日には、盧武鉉大統領と会談すべく韓国・ソウルに入り、小泉政権下で冷却化していた日中・日韓関係の改善を目指した。
北朝鮮が核実験を実施したことに対しては「日本の安全保障に対する重大な挑戦である」として非難声明を発するとともに、対北強硬派のジョン・ボルトンらと連携して国連の対北制裁決議である国際連合安全保障理事会決議1718を可決させ、個別でより厳しい経済制裁措置も実施した。
同年9月から11月にかけ、小泉時代の負の遺産とも言える郵政造反組復党問題が政治問題化する。12月には、懸案だった教育基本法改正と防衛庁の省昇格を実現した。一方で、同月、安倍が肝煎りで任命した本間正明税制会長が公務員宿舎への入居と愛人問題で、佐田玄一郎内閣府特命担当大臣(規制改革担当)兼国・地方行政改革担当大臣が架空事務所費計上問題でそれぞれ辞任。この後、閣内でスキャンダルが続いた。
2007年3月、安倍の北朝鮮による日本人拉致問題に対する非難と従軍慰安婦問題への謝罪に消極的であることが「二枚舌」とワシントンポストに批判された[22]が、4月下旬には米国を初訪問し、小泉政権に引き続き日米関係が強固なものであることをアピールした。参議院沖縄県選挙区補欠選挙に絡み、日米関係や基地移設問題が複雑に絡む沖縄県特有の問題があったため、多くの側近の反対を退け2回にわたり沖縄県を訪れて自民系無所属候補の島尻安伊子の応援演説を行うなどのバックアップを行った(島尻は当選し、その後自民党に入党)。
5月28日、以前から様々な疑惑のあった松岡利勝農水大臣が議員宿舎内で、首を吊って自殺[注 2]。
こうした中、6月当初の内閣支持率は小泉政権以来最低になったことがメディアで大きく報じられた。同月6日 - 8日には首相就任後初のサミットであるハイリゲンダム・サミットに参加、地球温暖化への対策を諸外国に示した。また、議長総括に北朝鮮による日本人拉致問題の解決を盛り込ませた。7月3日には久間章生防衛大臣の原爆投下を巡る「しょうがない」発言が問題化。安倍は当初続投を支持していたが、批判の高まりを受け久間に厳重注意を行った。久間は直後に辞任し、後任には小池百合子が就任した。
参議院議員選挙(2007年)での敗北
2007年7月29日の第21回参議院議員通常選挙へ向けての与野党の舌戦開始早々、自殺した松岡の後任である赤城徳彦農林水産大臣にもいくつかの事務所費問題が発覚。選挙中に発生した新潟県中越沖地震では発生当日に遊説を打ち切り現地入りした。同年の参議院選挙では「年金問題」の早期解決を約束し、「野党に改革はできない、責任政党である自民党にこそ改革の実行力がある」とこれまでの実績を訴えた。選挙前、安倍は「そんなに負けるはずがない」[25]と楽観視していたとも言われるが、結果は37議席と連立を組む公明党の9議席を合わせても過半数を下回る大敗であった。これまで自民党が強固に議席を守ってきた、東北地方や四国地方で自民党が全滅、勝敗を左右する参議院一人区も、軒並み民主党候補や野党系無所属に議席を奪われた。
体調の悪化と総辞職
参院選直後の7月31日の自民党総務会において、「決断されたほうがいい」などと党内からも退陣を促す声が出た(安倍おろし)[26]。
同日、アメリカ下院では慰安婦非難決議が議決されていた。翌8月1日には赤城農相を更迭したが、「遅すぎる」と自民党内からも批判された[27]。
広島平和記念式典に行く前日の8月5日から、胃と腸に痛みを感じ、食欲の衰えを感じるようになる[28]。そして、8月19日から8月25日のインドネシア・インド・マレーシア3ヶ国訪問後は下痢が止まらなくなり、症状は次第に悪化し始めた[25]。しかし、慶應義塾大学病院の主治医によると、(17歳のときに発症したという)潰瘍性大腸炎の血液反応はなく、機能性胃腸障害という検査結果であったという[29]。
選挙結果や批判を受け、8月27日に内閣改造、党役員人事に着手した(第1次安倍改造内閣)。ところが組閣直後から再び閣僚の不祥事が続き、求心力を失う。9月9日、オーストラリア・シドニーで開催された APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の終了にあたって開かれた記者会見において、テロ特措法の延長問題に関し9月10日からの臨時国会で自衛隊へ給油が継続ができなくなった場合は、内閣総辞職することを公約した。この間も安倍の健康状態は好転せず、体調不良により APEC の諸行事に出席できない状況となり、晩餐会前の演奏会を欠席した[30]。
2007年9月10日に第168回国会が開催され、安倍は所信表明演説の中で「職責を全うする」という趣旨の決意を表明した。なお、この表明では自身の内閣を「政策実行内閣」と名づけ、「美しい国」という言葉は結びに一度使ったのみであった[注 3]。
2007年9月12日午後2時(JST)、「内閣総理大臣及び自由民主党総裁を辞する」と退陣を表明する記者会見を急遽行った[32]。また、理由についてはテロとの戦いを継続する上では自ら辞任するべきと判断したとした[33]。これにより同日予定されていた衆議院本会議の代表質問は中止となった。
退陣表明の翌日(9月13日)、慶應義塾大学病院に緊急入院。検査の結果、胃腸機能異常の所見が見られ、かなりの衰弱状態にあると医師団が発表した。
安倍内閣メールマガジンは9月20日配信分において「国家・国民のためには、今身を引くことが最善と判断した」とのメッセージの下、これをもって最終号を迎えた[34]。
なお、病院側は、安倍首相の容体は回復してきているものの退院できる状態ではないとした[注 4]。9月21日は安倍の53歳となる誕生日だが、病院で誕生日を迎えることになった[35]。このように安倍首相は退陣まで公務復帰できなかった状況だが、与謝野官房長官は「首相の判断力に支障はない」と内閣総理大臣臨時代理は置く予定はないという方針をとっていた[36]。20日の官房長官会見では「首相は辞任と病気の関係を説明するべき」としていた[37][注 5]
9月24日17時、慶應義塾大学病院にて記者会見を行い、自身の健康状態及び退陣に至る経緯について「意志を貫くための基礎体力に限界を感じた」と釈明し、政府・与党、国会関係者並びに日本国民に対して「所信表明演説後の辞意表明という最悪のタイミングで国会を停滞させ、多大な迷惑を掛けたことを深くお詫び申し上げたい」と現在の心境を開陳、謝罪した[38]。さらに、首相としての公務に支障があったにも関わらず臨時代理を置かなかったことについては「法律にのっとって判断した」としたが、これについては、毎日新聞により、政府内でも批判の声があると報じられた[39]。
9月25日、安倍内閣最後の閣議に出席し、その後国会へ登院して、衆議院本会議での首班指名選挙にも出席した。安倍内閣最後の閣議で、閣僚全員の辞職願を取り纏めて内閣総辞職した。安倍は最後の閣議の席上、全閣僚に対して一連の事態に対する謝罪及び閣僚在任に対する謝意を述べた。26日には皇居で行われた福田康夫首相の親任式に出席し正式に辞職、その後、再び病院へと戻った。なお、第1次安倍内閣の在職日数は1年余りとなる366日であった。第1次安倍改造内閣は31日の短命に終わった。
突然の辞任への反応
小川榮太郎によると、多くの国会議員は、記者から安倍が退陣表明をすると聞かされた。亀井静香が記者に向かって「えっ嘘でしょ。これから代表質問だよ。何かの間違いでしょう」と驚く映像は、繰り返し放送されたという[40]。
安倍は辞任の理由として「テロ特措法の再延長について議論するため民主党の小沢代表との党首会談を打診したが、事実上断られ、このまま自身が首相を続けるより新たな首相のもとで進めた方が良い局面になると判断した」「私が総理であることが障害になっている」などとした(小沢は記者会見で「打診を受けたことは1回もない」と否定し、以降も「意見を変える気はない」と明言)。一方、自身の健康への不安のためとする理由も、与謝野馨(当時、内閣官房長官)が同日中会見で述べている。24日の記者会見では本人も健康問題が辞任の理由の一つであることを認めた。
もともと胃腸に持病を抱えており[41]、辞意表明当日の読売新聞・特別号外でも持病に触れられていた。また、辞意表明前日には記者団から体調不良について聞かれ、風邪をひいた旨を返答している[42]。この「胃腸の持病」について、安倍は辞任後の2011年に掲載された『週刊現代』へのインタビューで、特定疾患である「潰瘍性大腸炎」であったことを明かしている[43]。
臨時国会が開幕し内政・外交共に重要課題が山積している中で、かつ所信表明演説を行って僅か2日後での退陣表明について、野党側は「無責任の極み」であるなどと批判した[44][45]。与党側でも驚き[46]や批判[47]の声が上がったほか、地方の自民党幹部からも批判が出た[48]。
9月13日に朝日新聞社が行った緊急世論調査では、70%の国民が「所信表明すぐ後の辞任は無責任」と回答している[49]。
安倍の突然の辞意表明は、日本国外のメディアもトップニュースで「日本の安倍首相がサプライズ辞職」、「プレッシャーに耐えきれなかった」(アメリカCNN)などと報じた。欧米諸国の報道でも批判的な意見が多かった[50]。
辞任の原因
2007年当時の医師の診断ではカルテ上は「腸炎、または急性腸炎」で一般に言う「腹痛」であったが、実際には「潰瘍性大腸炎」を患っていた[51]。潰瘍性大腸炎は1973年に特定疾患(2015年からは指定難病)に指定されている。
- 潰瘍性大腸炎の病状
小川榮太郎によると、安倍は17歳のときに潰瘍性大腸炎を発症した[40]。自民党国対副委員長となり、食事ができずに三ヶ月入院して点滴の日々で体重激減した頃が、最も症状が重かった[40]。このとき、「癌でこの先長くない」という噂も流れる[29]。妻の昭恵をはじめ、病名を公表すべきとの意見もあった[29]が、安倍は、官房副長官時代の2000年に症状が出て以降は、幹事長・官房長官などの激務にも体調は万全だったため、2007年8月の段階までは病気を寛解できたと判断していた[29]。
- 麻生・与謝野クーデター説
- 安倍の辞任において、幹事長の麻生太郎と官房長官の与謝野が安倍を辞任表明に追い込んだとする「麻生・与謝野クーデター説」が自民党の新人議員の一部によってメディアを通じて広められた。この「麻生・与謝野クーデター説」について与謝野官房長官は、9月18日の閣議後の会見において明確に否定した。さらに麻生幹事長は9月19日に「事前に安倍首相の辞意を知っていたのは自分だけではない」とし、与謝野官房長官も同日「中川(秀直)さんは11日(辞任表明の前日)に安倍さんに会っていて、知っていてもおかしくない」と、中川前幹事長も事前に安倍の辞意を知っていたことを示唆した[52][53]。
内閣総理大臣退任後
体調回復と活動の再開
その後、入院していた慶應義塾大学病院から仮退院し、東京・富ヶ谷の私邸で自宅療養に入った[54]。
11月13日に新テロ特措法案の採決を行う衆議院本会議に出席し、賛成票を投じた後、福田康夫首相や公明党の太田昭宏代表へ体調が回復したことを伝えた[55]。
2007年末、『産経新聞』のインタビューにて、「『美しい国』づくりはまだ始まったばかり」[56]と述べ、2008年からは活動を本格的に再開し「ジワジワと固まりつつある良質な保守基盤をさらに広げていく」[56]と答えている。
2008年1月、『文藝春秋』に手記を寄稿。2007年9月の退陣に関し、体調悪化のため所信表明演説で原稿3行分を読み飛ばすミスを犯したことが「このままでは首相の職責を果たすことは不可能と認めざるを得なかった。決定的な要因のひとつだった」と告白するなど、辞任の主な理由は健康問題だったとしている[57][58]。
2008年3月5日、安倍は勉強会「クールアース50懇話会」を立ち上げ、塩崎恭久や世耕弘成らが入会した[59]。設立総会において、安倍は「北海道洞爺湖サミットを成功させるのは私の責任」[60]と語り、同懇話会の座長に就任した。3月6日、清和政策研究会(町村派)の総会に出席し、「首相として1年間、美しい国づくりに全力を傾注してきたが、残念ながら力が及ばなかった。私の辞任に伴い、みなさんに風当たりも強かったのではないか。心からおわびを申し上げたい」[61] と述べて所属議員に謝罪した。
第45回衆議院議員総選挙直後に行われた2009年自由民主党総裁選挙では、麻生太郎とともに、平沼赳夫の自民党への復党と総裁選挙への立候補を画策したが、平沼が難色を示したため実現せず、西村康稔を支援した[62]。
2010年4月義家弘介が初代塾長の信州維新塾開講式や6月(後に最高顧問に就任する)J-NSC自民党ネットサポーターズクラブ設立総会にゲスト参加[要出典]。10月25日、インドのマンモハン・シン首相を来賓として迎えて開かれた日印友好議員連盟の会合で「(日印両国は)民主主義と法の統治を共有する同盟に近い関係だ」と述べた[63]。
2度目の総裁就任
2012年9月12日、谷垣総裁の任期満了に伴って行われる2012年自由民主党総裁選挙への出馬を表明。自らが所属する清和会の会長である町村信孝の出馬が既に取り沙汰されていたこともあり、前会長の森からは出馬について慎重な対応を求められていたものの、これを押し切る形での出馬となった。当初は、清和会が分裂選挙を余儀なくされた事や5年前の首相辞任の経緯に対するマイナスイメージから党員人気が高かった石破茂、党内重鎮からの支援を受けての出馬となった石原伸晃の後塵を拝していると見られていた。しかし、麻生派、高村派が早々と安倍支持を表明した事などが追い風となり、9月26日に行われた総裁選挙の1回目の投票で2位に食い込むと、決選投票では、1回目の投票で1位となっていた石破を逆転。石破の89票に対し108票を得て、総裁に選出された[64]。一度辞任した総裁が間を挟んで再選されるのは自民党史上初、決選投票での逆転は1956年12月自由民主党総裁選挙以来となった[65]。
内閣総理大臣に再就任
2012年12月16日の第46回衆議院議員総選挙で自民党が圧勝し、政権与党に復帰。同年12月26日、安倍が第96代内閣総理大臣に選出され、第2次安倍内閣が発足した。1度辞任した内閣総理大臣の再就任は、戦後では吉田茂以来2人目である[注 6]。
首相再登板後は、デフレ経済を克服するためにインフレターゲットを設定した上で、日本銀行法改正も視野に入れた大胆な金融緩和措置を講じ、多年に渡って続くデフレからの脱却に強い意欲を示す。大胆な金融緩和、機動的な財政出動、民間投資を喚起する成長戦略を三本の矢と称した一連の経済対策は、アベノミクスと称される。「アベノミクス」は2013年新語・流行語大賞のトップテンに入賞し、安倍が受賞した[66]。
参議院議員選挙(2013年)での勝利
第1次安倍政権時に大敗を喫した第21回参議院議員通常選挙(前述)以降、参議院では政権与党が過半数を下回るねじれ国会が続いていた(2009年の第45回衆議院議員総選挙から2010年の第22回参議院議員通常選挙までの期間を除く)。2013年7月21日の第23回参議院議員通常選挙で、政権与党の自民・公明両党が合わせて半数を超える議席を獲得し、「ねじれ」は解消した。
2020年東京オリンピック招致
2013年9月7日、ブエノスアイレスで行われた第125次IOC総会において東京都が2020年夏季オリンピックの開催地に選ばれた。安倍は前年12月の首相就任以降、東京招致委員会の最高顧問として各国首脳との会談や国際会議の際に東京招致をアピールした。さらに、2013年3月に来日したIOC評価委員会との公式歓迎行事では演説を行い、歌を披露する場面も見られた。安倍は首相就任後、1964年東京オリンピックの開催が決定した当時の首相が祖父である岸信介であることを持ち合いに、自らがIOC総会に出席してプレゼンテーションを行う意欲を見せていた。これにより開催地決定の直前である9月5日と6日にロシアのサンクトペテルブルクで開催されたG20を途中で切り上げ、6日にブエノスアイレスに到着しIOC委員へ東京支持を呼びかけた[要出典]。
7日の総会では東京のプレゼンターの1人として演説を行い、「フクシマについて、お案じの向きには、私から保証をいたします。状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません[67]。(原文:"Some may have concerns about Fukushima. Let me assure you, the situation is under control. It has never done and will never do any damage to Tokyo."[68])」と発言。演説後の質疑応答では総会直前に明らかとなった福島第一原子力発電所の汚染水漏れ[69][70]に関する質問が出た。これに対し安倍は「結論から言うと、まったく問題ない。(ニュースの)ヘッドラインではなく事実をみてほしい。汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされている」、「健康問題については、今までも現在も将来も、まったく問題ない。完全に問題のないものにするために、抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している」と答え[71]、「子供たちの将来や日本にやってくるアスリートに対する責任を完全に果たしていく」と述べた。しかし、その後の汚染水漏れのニュースは後を絶たず[72]、安倍の発言が東電の公表している状況とも異なっているなど[73]、状況は統御されていない事実が明らかになった[74]。このことは国会でも追及されており、安倍は追及に対して「事態は掌握しているし、対応はしている、という意味でコントロールと発言した」と抗弁している[75]。
なお、9月19日に福島第一原子力発電所を視察した際、安倍は東電幹部に「0.3(平方キロ)は(どこか)」と尋ね、実際の範囲がどの程度か理解しないまま発言していた可能性があると共同通信に報じられた[76]。
ちなみに、開催決定後、文部科学大臣の下村博文を「東京オリンピック・パラリンピック担当大臣」に任命し、内閣官房に推進室を設置して各省庁との調整を行う組織を新設することを固めている。
参議院議員選挙(2016年)での勝利
任期満了に伴う2016年7月10日の第24回参議院議員通常選挙では、北海道・東北地方・信越地方・沖縄県で苦戦したものの、前回を上回る議席を獲得した。安倍はこの結果を受けて、アベノミクスが信任を得たものと主張した[77]。
東京都議会議員選挙(2017年)での敗北
2017年7月の都議会選挙では57議席から23議席に減らし、2009年の都議選時の38議席にも満たない過去最低の議席数に留まった。これについて、安倍は「大変厳しい都民の審判が下された。自民党に対する厳しい叱咤と深刻に受け止め、深く反省しなければいけない」と述べた。敗因について、「政権発足して5年近く経過し、安倍政権に緩みがあるのではないかという厳しい批判があったのだろう。真摯に受け止めなければいけない。政権を奪還したときの初心に立ち返って全力を傾ける決意だ」と説明した[78]。
衆議院議員総選挙(2017年)での勝利
選挙前と同じ284議席を獲得し、安倍自民党が大勝した。小選挙区で218議席、比例代表で66議席を獲得した。小選挙区の候補者は、北関東ブロック、東京ブロック、南関東ブロック、近畿ブロック、中国ブロックで比例復活も含めて全員当選した。小選挙区の候補者3名が無所属で当選後、公示日に遡って自民党公認となった[79]。
政見・政策
皇室
- 皇室典範解釈
- 「皇統の継承は男系でつないでいくと皇室典範に書いてある」とし「女性宮家はそういう役割を担うことができない」と述べている[80]。
- 退位
- 2016年8月の天皇の生前退位の示唆を受け、政府は有識者会議を設けた。有識者会議および安倍内閣とも、違憲性検討等に時間を要する皇室典範改正ではなく特例法制定での早期決着の方針を志向した[81]。しかし、2017年1月26日の衆議院予算委員会での細野豪志議員からの質問に対し、安倍は皇位継承や女性宮家創設を含めた皇室典範改正について「当然、必要であれば改正いたします」と答弁した[82]。2017年4月21日、有識者会議は最終報告書を安倍に提出した。退位後の天皇の呼称や退位後の制度設計などが含まれる報告書に基づいた特例法案が国会に提出される見込みである[83]。2017年6月7日、参議院特別委員会で、退位特例法案が可決、成立した。本会議では、参議院天皇退位法案特別委員会で「女性宮家の創設等」の検討を政府に求める付帯決議が採択されたことも報告された[84]。安倍は、首相官邸で記者団に「政府としては、国会における議論、そして委員会の付帯決議を尊重しながら、遺漏なくしっかり施行に向けて準備を進めていく」と強調、皇位継承について「安定的な皇位の継承は非常に重要な課題だ。付帯決議を尊重して検討を進めていく」と語った[85]。
国家観
- 美しい国
- 総裁選直前の2006年7月19日に自らの政治信条を綴った自書『美しい国へ』を出版し、10刷・51万部以上を発行するベストセラーになった[86]。政権スローガンも「美しい国日本を作る」とし、自身の政権を「美しい国づくり内閣」と命名した。自身の政権の立場を“「戦後レジーム(体制)」からの新たな船出”と位置づけている。現行憲法を頂点とした行政システムや教育、経済、安全保障などの枠組みが時代の変化についていけなくなったとし、それらを大胆に見直すとしている。小泉構造改革について好意的に捉え、安倍政権においても引継ぎ加速させる見解を総理就任記者会見で表明している[21][注 7]。
- グローバリゼーション展開
- 政治家となって以来、日本の市場を、オープンにして国を開く事を自分の中に流れる一貫した哲学とし[注 8]、安倍内閣の成長戦略の方針の一つに、「人材や産業を始めとする徹底したグローバル化」を示し[注 9][注 10]、「もはや、国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました。[91]」と発言するなど、「世界に対してどこまでも、広々と、オープンにつながる日本」を追い求めている[88]。具体例としてCT・MRIの医療画像診断や粒子線治療などの最先端医療技術、鉄道インフラなどの海外展開の成長戦略を述べた [92]。2006年の所信表明演説で安倍は、「ヒト・モノ・カネ・文化・情報の流れにおいて、日本がアジアと世界の架け橋となる「アジア・ゲートウェイ構想」を推進する。」と表明[93]。「世界一、ビジネス・フレンドリーな国にしたいと、私たちは言い続けています。この点、シンガポールに追いつき、できれば追い越したい。真剣に、そう思っています。」[94]、「(日米)両国が、TPPをつくるのは、歴史の必然です。」という見解を示し[91]、グローバル企業活動の国境の撤廃を目指している[95]。2014年4月、安倍が内閣総理大臣時代の首相官邸ホームページには、「企業活動の国境、なくす」「グローバル企業は、関税の障壁など、国内外の市場にまたがる制度面の障害をクリアし、より自由に活動できるようになります。」と書かれている[95]。また、「私は、日本を、アメリカのようにベンチャー精神のあふれる、「起業大国」にしていきたいと考えています。[91]」とも述べている。
- アジア・ゲートウェイ構想
第165回国会の所信表明演説にて「日本がアジアと世界の架け橋となる『アジア・ゲートウェイ構想』を推進します」[93]と述べ、内閣官房に「アジア・ゲートウェイ戦略会議」を設置した。第166回国会の施政方針演説では、2007年5月までに「アジア・ゲートウェイ構想」を取りまとめると明言している[96]。- 議員定数削減
- 2016年2月19日、議員定数削減について「必ず実現する。平成32年の国勢調査まで先送りすることは決してしない。自民党総裁としての方針だ」と述べ、自民党案より大幅に前倒しする考えを示した[97]。
地方自治
構造改革の推進者であり、地方分権改革(道州制)を推進している[98]。地方創生は、第2次安倍政権における経済政策の一つであり、ローカル・アベノミクスと呼ばれることがある[99]。具体的には、政府関係機関の地方移転や各種特区の活用などが施策として挙げられている。
- 国家戦略特区
「岩盤規制」改革の突破口として、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点の形成を促進する観点から、国が定めた国家戦略特別区域において、規制改革等の施策を総合的かつ集中的に推進する特区と位置付けている[100]。
- 構造改革特区
実情に合わなくなった国の規制が、民間企業の経済活動や地方公共団体の事業を妨げている場合がある。この弊害を地域を限定して改革することで構造改革を進め、地域を活性化させることを目的とした特区として平成14年度に構造改革特区が創設された。地域の自然的、経済的、社会的諸条件等を活かした地域活性化を実現するための妨げとなる規制を取り除くツールとして、構造改革特区制度の活用を推奨している[101]。
- 道州制特区法の制定・道州制推進
- 2006年(平成18年)に北海道地方等の特別区域で道州制を導入できる道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律を成立、公布・施行した。道州制導入についても2007年の所信表明演説で「道州制は地方分権の総仕上げ」と表明し[102]、道州制が地方分権の最終形態として好ましいとの見解である[103]。
外国人政策
- 中国からの公費留学生の大幅拡充
2005年に都内の専修大学講演の中で「中国からの公費留学生の数がまだまだ少ない。思い切って増やして、反日にならずに日本を知ってもらうよう、我々も努力をしていかねばならない」との見解を示し[104]、以後、アジア・ゲートウェイ構想において、公費留学生受け入れの大幅拡充、在留資格制度見直し、留学生の就職を促進している[105]。
- 出入国管理・難民認定法改正案を閣議決定
2014年3月11日に、安倍内閣は、高度人材と認定された外国人が永住権を取得するために必要な在留期間を3年に短縮、親や家事使用人の帯同も認められるようにする出入国管理及び難民認定法改正案を閣議決定する[106][107]。安倍が、出入国管理・難民認定法改正案の閣議決定後の2014年4月20日にテレビ番組「たかじんのそこまで言って委員会」に単独出演し、その場で披露した見解が「J-castニュース」で取り上げられた。それは「日本の国力を維持するためには移民の受け入れも必要」という質問に○か×かで答えるコーナーで×をあげた[108]事や、「移民を受け入れてきた多くの国々が、様々な摩擦が起こって、入ってきた人々も、そこにいる人々も不幸な出来事がたくさん起こっている」と述べる[108]一方で、「いろんな生産現場で人手不足になることは間違いない」として外国人労働者の受け入れには前向きな姿勢を示し、滞在期限を区切る形で受け入れるとするもので[108]、安倍内閣としては高度外国人材に認定されれば、在留3年で永住権を取得できる法改正を閣議決定していたため[107][106]、こうした態度に対し、テレビ発言を取り上げた「J-castニュース」記事上では「安倍首相の中では外国人労働者の受け入れ拡大と移民政策の間には明確な線引きがあるようだ。ただ、こうした認識はまだまだ理解が広がっておらず、混乱を招く恐れがある。」といった見方をされている[108]。安倍は、女性の社会進出推進の観点から、家事や介護の分野への外国人材活用促進を指示している[109]。
捕鯨問題
2018年12月26日に30年ぶりの本格的な商業捕鯨の解禁や、日本の異例の国際機関脱退である国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退も決定した際は「近代捕鯨発祥の地」山口県下関市を地盤に持つ安倍と「古式捕鯨発祥の地」和歌山県太地町を地盤に持つ二階俊博幹事長の意向が働いたとされる[110]。
憲法
総裁選では施行60周年を迎えた日本国憲法を改正すると宣言し、総理就任後の国会で、「現行の憲法は、日本が占領されている時代に制定され、60年近くを経て現実にそぐわないものとなっているので、21世紀にふさわしい日本の未来の姿あるいは理想を憲法として書き上げていくことが必要と考えている」と述べた[111]。また「私は、国会議員になった当初から改憲論者だが、3つの点で憲法を改正すべきだと主張してきた。第一の理由だが、現行憲法は占領軍の手によって、憲法の専門家ではない人たちによって2週間そこそこで書き上げられた、と言われており、やはり国の基本法である限り、制定過程にもこだわらざるを得ない」と述べた[112]。現行憲法の前文については「敗戦国のいじましい詫び証文」「みっともない」と主張している[113]。
2017年5月3日、民間団体のシンポジウムへのビデオメッセージで、新憲法施行年を2020年としたいと表明した。改憲案の具体的内容として、現憲法の9条1項及び2項を堅持した上で自衛隊の根拠規定の追加や、高等教育を含む教育無償化への意向を表明した[114]。改憲への期限を明言した安倍の発言は海外でも報道された[115][116]。2017年9月の衆議院選挙において、安倍の憲法に自衛隊を明記する公約は、選挙協力する公明党が困惑し[117]、憲法学者らの集会では集団的自衛権の行使を可能としたことに触れ「憲法を改正する資格はない」「総理大臣が最も憲法を順守していない」と述べられた[118]
。
外交
第1次安倍内閣においては、「価値観外交」と「主張する外交」を外交の基本路線とした。このうち、「価値観外交」は、自由、民主主義、基本的人権、法の支配という普遍的な価値観を共有する国の輪を世界、アジアに拡大して行くことを目指す外交戦略である[119]が、第1次安倍内閣で外務大臣を務めた麻生太郎が、「自由と繁栄の弧」として初めて提唱したものである。自由と繁栄の弧は、民主主義や法の支配などの価値について、日本が非欧米圏における先駆者としての地位にあることに着目した上、北東アジアから、東南アジアを経て、インド、中東、中央アジア、中・東欧にかけての「弧」上にある国との間で、日本がリーダーシップをとってこれら価値を共有し、「弧」地域全体の繁栄に貢献する、その結果として経済や安全保障などで日本も国益を享受するという構想といえる[120][121]。
2012年12月28日に発足した第2次安倍内閣も、麻生太郎を副総理兼財務相・金融担当相としたほか、谷内正太郎を内閣官房参与としており、改めて自由と繁栄の弧を基本とした外交政策を打ち出すと指摘されている[122]、安倍が、平成24年12月28日にベトナム、インドネシア、オーストラリア、インドなどの首脳と相次いで電話会談を行ったのもその表れと指摘されている[123]。またプラハに本拠を置く国際NPO団体「PROJECT SYNDICATE」のウェブサイトに、12月27日付けで安倍晋三首相の英語論文が掲載され、そこで「アジアの民主主義セキュリティダイアモンド構想」を世界に向けて主張している[124]。
第2次安倍内閣最初の閣僚外遊は、民政移管を進めていたミャンマーへの麻生太郎副総理兼財務相・金融相の訪問で、麻生は「閣僚の最初の訪問先がミャンマーとなったこと自体、政権としてのメッセージである。」と述べている[125]。安倍も、就任後最初の外遊先として、2013年1月16日から18日にかけ、まずベトナムを訪れ、次にタイ、インドネシアを訪問。アジア太平洋地域の戦略環境が変化する中で、地域の平和と繁栄を確保していくため、自由、民主主義、基本的人権、法の支配など普遍的価値の実現と経済連携ネットワークを通じた繁栄を目指し、日本はASEANの対等なパートナーとして共に歩んでいく旨のメッセージを各国首脳に伝達した上、対ASEAN外交5原則を発表した[126]。
道傳愛子は、第2次安倍内閣における「価値観外交」の特色は、中国やインドの間という地政学的優位性が高い上、経済や安全保障での重要性も高まる東南アジアを重視する点であると述べている[125]。また、日本の価値観外交においては、港や道路などハードのインフラの整備だけでなく、投資環境整備にもつながる法整備支援や、人材育成といったソフトのインフラ整備への協力を、日本の役割として位置付けることが重要と主張している[125]。
第1次安倍内閣当時、「自由と繁栄の弧」には、民主主義や法の支配などの価値を共有しているとはいえない中国の反発を招くとの批判もあったが、就任後初の外遊先を中国に選ぶ[127]など安倍は原則論と現実的対応のバランスを保つことに努めてきており[128]、日本の国際的存在感の低下、尖閣諸島問題に象徴される日中間の力関係の変化という新たな国際情勢のもと、中国との正面衝突を回避しつつ、アジアにおけるパワーバランスを適正に保ち、アジア及び世界の安定と発展に寄与する外交政策であると再評価されている[129][130]。
- アメリカ合衆国
- 小泉政権により強化された日米安全保障条約をさらに充実させるため在日米軍と自衛隊の一体化を目指しており、集団的自衛権行使のための憲法改正も視野に入れている。
- 安倍政権の外交方針について、北海道新聞や沖縄タイムスなどからは対米追従であるという批判[131]や懸念[132]があるが、2013年3月の施政方針演説[133]によれば「日米同盟をより強固にしたい。わが国の安全確保の観点から当然の取り組みであり、地域の平和と安全に資する。対米追随外交との指摘はまったくあたらない」としている。
- 2014年4月24日の日米首脳会談で、日本の超電導リニア新幹線の技術をアメリカへ無償提供すると表明する[134]。2013年2月の首脳会談でも「日米同盟の象徴」と技術提供を提案していた[135]。なお、リニアの研究は1962年から開始しており、通常では、リニア技術提供を望む場合、ライセンス料が徴収される[135]。2013年3月には、日本企業が米軍のF-35開発に参加することを提言した[136]。2016年アメリカ合衆国大統領選挙中はヒラリー・クリントンと会談を行うも[137]、2016年11月17日に世界の政府首脳に先駆けて大統領選勝利後のドナルド・トランプ次期大統領と非公式会談して本間ゴルフの特注品を贈った[138][139][140]。
- 2017年11月5日、トランプ大統領が初来日。北朝鮮への圧力最大化で一致して米製防衛装備の購入も表明した[141]。両者のゴルフプレーを通じたゴルフ外交についても報じられた[142]。
- 欧州連合
- ドナルド・トランプアメリカ合衆国大統領が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)からの離脱や、大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)交渉の凍結など、保護貿易主義的政策をとることに対抗し、アメリカとの貿易交渉を優先する従来の方針を転換し、欧州連合(EU)と接近。2013年から交渉が続けられていたものの長年停滞していた日本・EU経済連携協定構想に関し、首席交渉官を交代させるなどして交渉を進め[143][144]、2017年12月には交渉の妥結を確認した[145][146]。
- イギリス
2014年7月17日、国家安全保障会議で、戦闘機用のミサイルをイギリスと共同研究することを決めた[147][148]。この研究は現状日本のシーカー技術を適用した場合どの程度の性能になるかをシミュレーションするもので部品などをやり取りすることはないという[149][150]。- 東南アジア
第2次安倍内閣は、経済や安全保障での存在感が高まる東南アジアを重視している。就任後1ヶ月以内に、自身のベトナム、タイ、インドネシア訪問、麻生太郎副総理のミャンマー訪問など、閣僚がアセアン主要国を次々と訪問した。安倍は、日本がASEANの対等なパートナーとして共に歩んでいく旨のメッセージを各国首脳に伝達した上、2013年1月18日には、訪問先のインドネシアにおいて、対ASEAN外交5原則を発表した[126][注 11]。「安倍ドクトリン」を参照
中華民国(台湾)- 祖父である岸信介や父・晋太郎も親台派であり、自身も台湾などとの交流強化を目指している亜東親善協会の会長を2012年の首相就任まで務めていたほか[152]、第一次安倍内閣の際には羽田空港と松山機場との間の直行便を推進したり、野党時代には台湾を訪問し馬英九総統、李登輝元総統などと会談を行うなど、筋金入りの親台派と言える。また、中華民国政府も安倍のことを親台派であると評価している[153]。また、第三次安倍内閣では国会答弁のなかで「日本の友人である台湾」と同答弁内で述べられた中国、韓国、北朝鮮、ロシアとは別格の表現をしている[154]ほか、同年7月29日に行われた参議院の我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会において、「台湾は、基本的な価値観を共有する重要なパートナーであり、大切な友人であります」と答弁している[155]。
- 中華人民共和国
- 大叔父の佐藤栄作は中国との国交正常化を目指していたことや[156][157][158]、父・晋太郎は日中平和友好条約締結や胡耀邦訪日に携わったことから対中関係を重視してきた[159]。2006年の総裁選は、ありのままの日本を知ってもらうために多くの中国人留学生を受け入れるべきと主張し、小泉政権時に悪化した日中関係の改善に意欲を見せた[160]。2006年の首相就任後の初外遊先に1999年の小渕総理以来の公式訪問として中国を選び、胡錦濤国家主席との会談では8年ぶりの共同文書「日中共同プレス発表」で戦略的互恵関係の構築を合意した[127]。この訪中は中国側から「氷を砕く旅(破氷之旅)」と歓迎された[161]。第2次安倍内閣でも親書や日中首脳会談などで戦略的互恵関係を日中関係の基礎と度々位置付けてる[162][163][164][165][166]。2017年9月には首相の参加は15年ぶりだった日中国交正常化45周年記念行事でも出席した安倍首相は戦略的互恵関係に基づいて日中関係を発展させることを表明し[167]、10年ぶり[168]に日中首脳間で交換された祝電でも戦略的互恵関係を重視し[169]、同年10月の第19回中国共産党大会にも自民党総裁名義で祝電をおくり[170][171]、同年11月に習近平国家主席や李克強国務院総理といった中国の首脳と第三国で立て続けに会う極めて異例の会談を行い[172][173][174]、翌2018年5月には中国の国家主席とは史上初の電話会談も行い[175]、同年6月に日中韓首脳会談で中国首相では8年ぶりに訪日した李克強と2008年から交渉されてきた日中防衛当局間のホットラインである海空連絡メカニズムの運用開始、一帯一路に基づく第三国での共同インフラ整備を具体化させる官民協議体の設置などで合意[176][177]してその後の視察にも同行した[178]、同年10月には日本の首相では7年ぶりに公式に訪中して「競争から協調へ」「お互いパートナーとして脅威にならない」「自由で公正な貿易体制の発展」の日中新時代3原則や先端技術やインフラ整備と金融などの協力で一致した[179]。
- ロシア
- 2016年12月16日の首脳会談終了後、安倍首相が強調したのは、4島の元住民の墓参など自由訪問の拡充の検討や、4島での共同経済活動を実現するための交渉開始で合意したことだった。また、プーチン大統領は、領土問題と捉えているのは日本だけであろう、4島一括返還は議題にすらできない、2島返還さえないと述べており、領土返還は難しい見通しとなった[180]。
- 大韓民国
- 国交正常化50周年記念式で祖父である岸信介や大叔父の佐藤栄作は国交正常化に大きく関与したと述べ[181]、父・晋太郎は親韓派であり[182]、父親同士が親密だった朴槿恵大統領に官房長官時代から神戸ビーフを贈り手紙をやりとりするなど交流があった[183]。第一次安倍内閣時に「韓国はまさに日本と同じ価値観を持っている」と発言をしている[184]。軍艦島(端島)など明治日本の産業革命遺産の世界文化遺産登録をめぐる韓国との交渉では、朝鮮半島出身者の徴用について、韓国側の要求を受け入れるように外務省に歩み寄りを指示している[185]。第三次安倍政権下では外務省による二国間関係を紹介するウェブページの韓国に関する記載から「基本的な価値を共有する」を削除し[186]、更に2018年には「最も重要な隣国」という表現も削除し、困難な問題があるが未来志向で前に進めていくべきといった表現に改めている[187]。
- 2013年の韓国の月刊誌「月刊朝鮮」(2013年4月号)による安倍へのインタビューで、安倍は日韓関係はじめ歴史問題や憲法改正などについて語った[188]。韓国側は2015年11月2日、安倍の訪韓に備えて朴槿恵大統領主催の昼食会などを交換条件に、慰安婦問題での「譲歩」を要求したが、日本側は拒否した。安倍は周囲に「昼飯なんかで国益を削らない」と語っていたという[189]。同年12月に慰安婦問題日韓合意を行い、翌年2016年には日韓初[190]の防衛協力協定である日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)も締結し、日米韓の枠組みで初のミサイル防衛合同演習も行った[191]。2018年5月9日に日中韓首脳会談のために初訪日した文在寅大統領とは日韓間の懸案は先送りされ[192]、その後の個別の首脳会談で日中が複数の合意文書を交わしたのに対して日韓では目立った成果がなかった[193]。徴用工訴訟問題をめぐって文大統領に「戦略的放置」で対応したとされ[194]、対抗措置も関係省庁に指示したため[195]、文大統領から「日本の政治指導者が政治的な争点とし、問題を拡散させている」は批判され[196]、李洛淵首相も「日本の指導者は反韓感情を利用しているとする見方もある」と反発した[197]。
朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)- 2007年2月12日に訪日したチェイニー米副大統領に、拉致問題が解決するまで北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除をしないように要請した[198]。
2016年、北朝鮮が5回目の核実験を行ったことについて「厳重に抗議し、最も強い言葉で非難する」とした声明を発表し[199]、国連演説で異例の名指しで批判して制裁強化の議論を日本が主導する意向を表明した[200]。2017年の国連演説では北朝鮮を非難して「対話を通じた問題解決の試みは無に帰した。何の成算があって三度同じ過ちを繰り返すのか。必要なのは対話ではなく、圧力だ」と演説した[201]。その前には「北朝鮮との対話は無駄骨。最大限の圧力をかけるべき」と主張する寄稿を米紙に行った[202]。2017年9月25日、衆議院解散演説において「北朝鮮には勤勉な労働力があり資源も豊富です。北朝鮮が正しい道を歩めば、経済を飛躍的に延ばすこともできる」と前置きした上で、弾道ミサイル計画を完全な検証可能なかつ不可逆的な方法で放棄させるため「今後ともあらゆる手段による圧力を最大限まで高めていく他に道はない」と述べた[203]。朝鮮中央通信からは「米国の反共和国制裁・圧迫策動に追従してる」として名指しで「安倍の輩」「忠犬」と批判されている[204][205][206]。2017年11月20日にトランプ米大統領が9年ぶりに北朝鮮をテロ支援国家に再指定した際は「北朝鮮に対する圧力を強化するものとして歓迎し支持する」と表明した[207]。2018年6月2日の講演で、米朝首脳会談が設定されたことに触れ「核武装した北朝鮮を決して容認するわけにはいかない。抜け道は許さないという姿勢で日本は国際社会をリードし、国際社会とともに圧力をかけてきた。その中で米朝首脳会談が行われることに期待したい」と述べた。これに先立つテレビ出演において「拉致問題が解決していない中で大きな経済支援をすることはない」と述べた[208]。- オーストラリア
- オーストラリアとは「基本的価値観を共有する[209]」としている。日豪FTAの交渉を開始し、2006年12月に合意した。2007年3月13日には安全保障協力に関する日豪共同宣言にジョン・ハワード首相とともに署名した。この宣言にはPKOなどの海外活動や対テロ対策、北朝鮮問題などで日豪が協力する、安全保障協議委員会の設置などが明記されていた[210]。「豪との共同宣言が中国狙ったものでない」とした[211]。
- インド
- 2007年8月に日印首脳会談を行い、政治・安全保障、経済、環境とエネルギーなど多岐に渡って合意した。また、インドの国会において、日印間の更なる関係強化について「二つの海の交わり」と題する政策演説を行った。外務省は「この演説内容はインドに非常に高く評価され、スピーチ終了後は総立ちとなるスタンディングオベーションとなった」と発表している[212][213]。2017年7月7日、モディ首相と会談し、日米印3か国の安全保障協力を強化する方針で一致した[214]。
中東・アフリカ
- 2014年1月にオマーンを訪問し、さらにコートジボワールを訪れた[215]。2017年8月10日、国連開発計画のシュタイナー総裁と面会し、貧困・飢餓の撲滅を目指す国連の持続可能な開発目標(SDGs)に向けて努力し、アフリカの開発の提案、防災、女性の活躍の分野で協力して成果を出す意欲を述べた[216]。
安全保障
日本版「国家安全保障会議」(NSC)構想を推進した。総理就任以前から憲法改正に関しては集団的自衛権の容認を打ち出してきた。2007年には安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会を開催、集団的自衛権の行使は日本国憲法第9条に反しないとの報告書を得て、宮崎礼壹内閣法制局長官に対し、解釈変更の指示を行ったが、職員の総辞職の可能性を示される抵抗を受け頓挫した[217]。第2次安倍内閣では、集団的自衛権行使容認派の小松一郎フランス大使を2013年8月8日に内閣法制局長官に任命した。しかし、体調不良のため小松は退任し、代わって内閣法制局次長であった横畠裕介を2014年5月16日に内閣法制局長官に任命した。横畠は、2016年3月18日の参議院予算委員会において、「我が国を防衛するためにの必要最小限度に限られる」としながらも「憲法上全てのあらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されていると考えていない」と答弁している[218]。
2006年11月14日、安倍内閣は閣議で、核保有についての鈴木宗男の質問主意書[219]に対して、「政府としては、非核三原則の見直しを議論することは考えていない」と強調しながらも、「核兵器であっても、自衛のための必要最小限度にとどまれば、保有は必ずしも憲法の禁止するところではない」との答弁書[220]を出した。
第2次安倍内閣においては武器輸出三原則の撤廃を含めた根本的な見直しに着手[221][222]。2013年9月28日に小野寺五典防衛大臣は、最先端の兵器は国際開発が主流であり、日本はその流れから取り残されているとして、武器輸出三原則を抜本的に見直す考えを示した[223]。
2014年3月、武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」の原案が与党のプロジェクトチームに示され[224]、同年4月1日に武器輸出三原則に代わる防衛装備移転三原則が閣議決定された[225]。
2015年11月1日、長崎で開催された第61回パグウォッシュ会議世界大会へ「非核三原則を堅持しつつ、「核兵器のない世界」の実現に向けて、国際社会における核軍縮の取組を主導していく決意」を表明するメッセージを寄せた[226]。
2016年11月15日、安全保障関連法で新たに認められた「駆け付け警護」を、南スーダンで国連平和維持活動(PKO)を行っている陸上自衛隊の任務に加える実施計画を閣議決定した。安倍は、「自衛隊の安全を確保し、意義のある活動が困難であると判断する場合は撤収を躊躇しない」と述べた。一方で「危険の伴う活動だが、自衛隊にしかできない責務をしっかりと果たすことができる」と述べた[227]。
2017年3月17日、情報収集衛星「レーダー5号機」の打ち上げ成功について「情報収集衛星を最大限活用し、今後とも日本の安全保障と危機管理に万全を期す」とのコメントを発表した[228]。
2017年8月9日、長崎平和祈念式典において、真に「核兵器のない世界」を実現するためには核兵器国と非核兵器国双方の参画が必要であり、日本は非核三原則を堅持し、双方に働き掛けを行うことを通じて、国際社会を主導していく決意を表明した[229]。その一方で核拡散防止条約(NPT)を批准せず、核兵器のない世界を双方に働きかけをできるのかは問題視されている[要出典]。
普天間基地移設問題
2013年12月25日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に向け、沖縄県知事の仲井真弘多と会談し、日米地位協定に関し環境面を補足する協定を締結するための日米協議開始などの基地負担軽減策を示した[230]。仲井真は「驚くべき立派な内容だ」と評価して移設先である名護市辺野古沖の埋め立て申請を承認する方針を固め[230]、同年12月27日午前にこの申請を承認した[231]。
尖閣諸島問題
「歴史と国際法によって、尖閣諸島(中国名:釣魚島)が日本の領土であり、中国と交渉の余地はない」と明言しており[232]、「日本と中国の間が異なる見解を有している」ことを認めている[233][234]。
日台漁業交渉
2013年4月に台湾との間で尖閣諸島沖の漁業範囲に関する取り決めを行った。この協定は官邸の独断で成立が決定されたとして、水産庁や外務省などと事前協議を行っていた地元の漁協は強く反発し、「いずれこの漁業範囲から日本船が締め出され中国船や台湾船しかいなくなる」、と強い懸念を出している[235][236]。実際に台湾漁船は当協定の成立が決定すると、協定の発行前から認められる予定の漁業範囲さえ超えた範囲で操業を開始した[237]。
教育
2006年12月に教育基本法を改正し、教育の目標の一つとして愛国心という言葉を盛り込んだ他、義務教育9年の規定や男女共学の項を削除した。内閣府直属の「教育再生会議」を立ち上げ、2007年6月には教員免許更新制を導入した。その他、学校週五日制の見直しや大学進学の条件として社会奉仕活動の義務化を提唱した。その他の政策としては、教育バウチャー制度の導入を検討、「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクト」の座長を務める[238]。2005年5月26日に開催された「過激な性教育・ジェンダーフリー教育を考えるシンポジウム」で自民党プロジェクトチーム座長を務めた安倍は、「男女の性別による差別は決して許されるものではない。」としながらも、ジェンダーフリーは、家族の破壊をもたらす概念であり、明らかに間違いと主張した。ジェンダーフリーの言葉の間違いについては、党内や政府内でも見解の一致が見られるとし、男女共同参画社会基本法の検討の必要性を述べた[239][240]。
改正後の教育基本法については、「一見、立派なことが書いてあるが、家族・郷土・歴史・伝統・文化・国など、私たちが大切にしなければいけないものが抜け落ちている。日本人として生まれたことに誇りを持つためには、そうしたことを子どもたちに教えていくことが大切ではないか」「“世界から尊敬されている”ということも、誇りが持てるということにとって大切だ。世界に貢献していく際に“日本はこういう理想を持っており、こういう世界を実現していきたい”と述べていく必要がある」と述べている[112]。これと関連して、教科書検定においてパン屋さんを使った題材について伝統と文化の尊重、国や郷土を愛する態度(愛国心)に照らして不適切という検定意見がついた。これ対して識者は薄っぺらな愛国心だと指摘した[241]。しかし、政府は「『パン屋』の記述に特定して検定意見を付した事実はない」とし、具体的には「まちやくにのすきなところは」との設問を追加するなど、国や郷土を具体的に盛り込む修正を行い合格した。その過程で、散歩道にあったパン屋さんは消え、自分の住む町や季節ごとの和菓子を作る日本のお菓子屋さんをもっと知りたくなるストーリーとなった[242]。
また、親学を推進する[243]。親学推進議員連盟の会長をつとめ[243]、2012年の「山口県親学推進セミナー」では「戦後の教育の問題点は家庭教育がスポッと落ちてしまい、その存在が希薄化されてきたことにある。家庭教育支援の思索を推進していくように政府は勤めていかなければならない」と述べている[243]。
第二次政権時においては、教育再生実行会議の第一次提言や2013年3月の施政方針演説より、
- 6・3・3・4制の見直しによる「平成の学制大改革」を始める
- 道徳の教科化
- いじめ対策の法制化
などが主たる教育政策である。
第一次政権時の教育政策については教育再生会議、第二次政権時については教育再生実行会議も参考のこと。
2014年11月21日、2年間で20万人、5年間で40万人分の保育の受け皿を整備し待機児童を無くすと述べている[244]。
2017年5月24日、教育再生実行会議において、大人と子供と向き合う時間を確保することが家庭等での教育力向上に資するとの見解のもと、地域ごとの学校休業日の分散化を図る「キッズウィーク」と称する施策に取り組むことを表明した[245]。
2017年8月3日、第3次安倍内閣第3次改造内閣での記者会見において、「人づくり革命担当大臣」を新設した。子どもへのユニバーサルな教育機会の提供みならず、社会人の学び直しを推進することを企図している[246]。
2017年9月25日、衆議院解散演説において「所得が低い家庭の子供たち、真に必要な子供たちに限って高等教育の無償化を必ず実現する決意です。授業料の減免措置の拡充と合わせ、必要な生活費を全てまかなえるよう、今月から始まった給付型奨学金の支給額を大幅に増やします」[247]、「3歳から5歳児の幼稚園、保育所について全面無償化します。所得の低い世帯について保育所無償化を行うことを考えています」「どんなに貧しい家庭に育っても意欲さえあれば専修学校や高等教育、大学にも進学できる社会に変革をしなければならない。真に必要な子供に限って、高等教育の無償化を必ず実現していく」と述べた[248]。しかし、安倍は2017年11月27日の衆議院予算委員会で選挙公約で掲げた3歳から5歳児の幼児教育・保育の全面無償化について、補助対象とする認可外保育施設の種類などに関し専門家の意見聴取を求め、与党連携で2018年夏までに結論を出すと述べ、制度設計の詳細については先送りすることを表明した[249]。
民法論議・家族制度
夫婦同姓規定
現行の民法規定で定められている夫婦同姓を支持しており、選択的夫婦別姓について「夫婦別姓は家族の解体を意味する。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという左翼的かつ共産主義のドグマだ。これは日教組が教育現場で実行していることです」と述べている[250][251][252][要ページ番号]。2016年2月29日に衆議院予算委員会で、岡田克也から、この発言の真意について説明を求められ、「(選択的夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲とした)最高裁判決における指摘や国民的議論の動向を踏まえながら慎重に対応する必要がある」と答弁している[253][254]。野田聖子(自民党)や菊田真紀子(民主党)は、安倍が「夫婦別姓反対の急先鋒」であるとしている[255][256][257]。
離婚後300日規定
女性が離婚後300日以内に出産した場合、子供は戸籍上、離婚前の夫の子供になるという民法の規定に関しては、2007年2月15日の参院厚生労働委員会の少子化問題に関する集中審議において「見直しの要否を含めて、慎重に検討する」と回答し[258]、2月23日の衆院予算委員会において「時代が変わってきて親子関係はDNA鑑定ですぐにわかる」と答弁している[259]。
婚外子規定
婚外子の遺産相続分を嫡出子の半分とする規定を削除する民法改正に関しては、2013年10月18日の参院本会議において「不合理な差別は、解消に向けて真摯に取り組む必要がある」と答弁している[260]。
性的少数者対策
2016年1月26日、衆議院本会議において「偏見や不合理な差別があることは残念。今後の国民的な議論も踏まえ、慎重に検討する必要がある。」旨、答弁した[261]。第3次安倍内閣 (第1次改造)において、自民党は性的少数者への理解を促す「性的指向・性同一性の多様性に関する理解増進法案」を取り纏めた[262]。
公務員改革
内閣府特命担当大臣(規制改革担当)兼国・地方行政改革担当大臣に渡辺喜美を置き、官僚主導の政治体制、公務員の給料制度、天下り、業界の談合体質など官僚にまつわる諸悪を摘出し、政官業の関係を健全化しようと国家公務員法改正を打ち出した。同改正法に基づいて (1) 官民人材交流センター(人材バンク)の制度設計 (2) キャリア制度の見直し、という2つの作業が開始され、それぞれについて有識者懇談会が設けられた。安倍も成田空港社長に官僚OBがなることを却下したり、東京証券取引所への天下り人事にも横槍を入れるなどの行動を見せていたが、官僚や自民党内から激しい抵抗が起きるようになる。渡辺喜美行政改革担当相が、自民党行政改革推進本部の会合に出席し、各省庁による天下り支援を禁止する案を説明すると、党側に『各省にあっせん機能を残すべきだ』と猛反発されたり、天下り規制の懇談会にて天下りをしている元事務次官7人のヒアリング調査をしようとしたところ、担当官僚が元事務次官に懇談会出席の要請すらしないなどの抵抗が見られた[要出典]。
この公務員改革で安倍は、特に社会保険庁改革(社保庁民営化)に力を入れていた。年金行政への信頼回復とともに、社保庁の民営化によって公務員削減の突破口にしたいとの狙いからだった[263]が、ここでも激しい抵抗にあった[要出典]。田原総一朗は、安倍が社保庁民営化を目指していたことで、社保庁がクーデターを起こし、社保庁の年金が酷い状態であるということを社保庁自らが民主党やマスコミに選挙前に広め、「いかに安倍が危機管理ができないか」と国民に思わせて退陣を狙う「自爆テロ」を行い、そしてマスコミもそれに乗った、と主張した[264]。
労働政策
- 再チャレンジ政策
- 小泉政権下によって生じた都市と地方の歪や不安定雇用の増加やいわゆる経済的不平等の是正を掲げ、再チャレンジ政策の一環としてフリーターを正社員として採用するよう企業に要請したが、2006年8月の 経団連が会員企業に行なったアンケートによると、フリーターの正規社員採用に約9割が消極的であるとの結果であり、期待通りの成果は出なかった。「ワーキングプアと言われる人たちを前提に言わばコストあるいは生産の現状が確立されているのであれば、それはもう大変な問題であろう」と述べ、「企業も非正規雇用者が正規社員へ常にチャレンジができるように積極的に取り組むことが、中、長期的には企業への信頼感、活力も高まる」という旨の考えを示しており、偽装請負等に関しても、「法令、労働基準法に反していれば厳格に対応していく」旨を述べている[265]。
- 最低賃金
最低賃金の抜本的引き上げは、「中小企業を中心に労働コスト増で、かえって雇用が失われ非現実的だ。」とした[266]。2007年3月の参議院の予算委員会では、「最低賃金制度を生活保護以上にしていくという改正を行い、成長力底上げ戦略を進めていく中で、中小企業と労働者の生産性を上げることによって、最低賃金も上げるという二段構えの仕組みを検討している」考えを示した[267]。- 男女共同参画
- 2013年4月19日、出産した女性の復職しない理由は「家事や育児に専念するため」で現行の1年育休より長い育休の希望が多いと指摘し、経済団体への努力目標として3年の育休(3年間抱っこし放題での職場復帰支援)の推進を提言した[268]。2014年3月28日、首相官邸で、すべての女性が輝く社会を目指す活動を推進する「輝く女性応援会議」が開催された。各界のリーダーからの宣言や、地域版の「輝く女性応援会議」の開催などが行われている[269]。
- 働き方改革
- 2016年9月26日、働き方改革の実現を目的として内閣総理大臣決裁により働き方改革実現会議という安倍の私的諮問機関が設置された[270]。日本の企業文化、日本人のライフスタイル、日本の働くということに対する考え方を改革するという定義の下、同一労働同一賃金や罰則付きの時間外労働の上限規制などの実現が示された[271]。2016年12月の政府主催の国際シンポジウムにおいて、働き方改革の成功について男性の意識変革を指摘し、家事や育児を夫婦で共に担うことや、出産直後から夫が育児に取り組めるよう、男性の育休に加え、妻の出産直後の男性の産休を推奨する旨、述べた[272]。その他の具体的施策として、政府と経済界が提唱する消費喚起キャンペーンのプレミアムフライデー[273]、夏季の早期出社・早期退社を奨励するゆう活[274]、時差通勤を促す「時差Biz」なども働き方改革の一環とされる[275]。
- 高度プロフェッショナル制度
- 高収入の専門職種の一部に対し、裁量労働制を想定した「高度プロフェッショナル制度」の導入を、安倍政権で検討を進めていた[276]。しかし、高収入の一部専門職を残業代支払いなどの労働時間規制から外すことになり、野党が「残業代ゼロ法案」として批判していた。安倍は、当初の法案から、休日確保の義務化等の働き過ぎ防止を考慮した法案に修正する方針を表明した[277]。2018年6月29日、高度プロフェッショナル制度の新設などを含む「働き方改革法案」が成立した。但し、審議過程で厚生労働省の作成したデータが不適切であったことが判明したため、裁量労働制の適用業種の拡大は削られた[278]。
TPP問題
2012年11月14日の野田佳彦首相の解散表明により選挙の争点として浮上した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、当初の自民党はASEANでのTPP参加表明に反対し、「聖域なき関税撤廃」を前提とした交渉参加には反対するとしていたが[279]、安倍は日本商工会議所会頭の岡村正との会談で交渉に含みをもたせ、「TPP推進に対して強い交渉力を発揮して頂けるという強い意気込みは感じたので心強く思う」と評価された[280]。この岡村とのやりとりについて、経団連会長の米倉弘昌も「いいことだ」[281]と歓迎している。しかし、その後の記者会見では「交渉参加に前向きというのはあくまでミスリードだと思います。」[282]と否定し、その結果として衆院選では160人超の候補者が、TPP交渉参加反対を訴える農協(JA)系の政治団体から推薦を受け当選した[283]。
しかし、農水大臣に農政になじみの薄い林芳正を起用し[284]、甘利明、麻生太郎など経済関係の主要閣僚にもTPP賛成派を配置[285]。さらに外交政策に関して助言を行う内閣官房参与には、日本はTPPに参加すべきとの発言をおこなっていた[286][287]谷内正太郎を起用した。また、TPP賛成派の岡素之や大田弘子をそれぞれ内閣府規制改革会議議長及び議長代理とし、さらに新設の日本経済再生本部に設置された産業競争力会議のメンバーにも日本維新の会と関係の深い[288]TPP賛成派の竹中平蔵[289]や、TPP早期実現要請を行なっていた三木谷浩史[290]を加えた。経済全般のマクロ政策を決める経済財政諮問会議の民間議員も全員TPP賛成派で、高橋進は構造改革派の論客として野田佳彦民主党政権の方針を力強く後押ししていた人物[291]。伊藤元重にいたっては「TPPに参加できないなら、農村部にある多くの工場は閉鎖を余儀なくされる」[292]というのが持論で、野田佳彦民主党政権の「社会保障制度改革国民会議」のメンバーでもあった[293][294]。
2013年2月23日、日米首脳会談後に共同声明を出した。それまでの関税に関する見解(カークUSTR代表と玄葉外務大臣との会談)は「物品関税の最終的な扱いについてはTPP交渉プロセスのなかで決まっていくもの」[295]であったが、今回の共同声明は「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する」[296]との表現になった。この会談後、主要メディアにおいてTPP賛成が増加し、共同通信63%[297]、FNN53%[298]、テレビ朝日51%[299]、日本経済新聞47%[300]となった。
2013年3月8日、日本政府が野田佳彦内閣当時の昨年3月の段階から『TPP交渉参加後発組に出された3条件』を把握していたにもかかわらず、国民に条件を告知することなく交渉参加を推進していたことが判明した[301]。安倍はこの問題に関して衆院予算委員会で答弁を拒否し、質問した日本維新の会の松野頼久国会議員団幹事長が「政府が交渉参加のルールを探って議会に説明するのは当然の責任だ」と批判した[302]。また岸田文雄外相は「少なくともわが国には、そうした条件の提示は全くない。引き続き情報収集に全力を挙げる」と答弁していたが、9日になって安倍は「ルールを作っていく上で、最初に入った人たちが後から入った人に議論を覆されたら困るというのは、それはそうだろうと思う」と述べた[303]。安倍政権はこの3条件を政権移行直後に把握したが公表はしていなかった[304]。
2013年3月14日、自民党のTPP対策委員会が「重要5品目等や国民皆保険制度などの聖域の確保を最優先」し、それが確保できないと判断した場合は「脱退も辞さない」とする決議をまとめた。ただ自民党執行部はこの決議に関して「彼らも地元に帰って反対してきたと言えるだろう」と慎重派のガス抜きであることを認めており、政府高官は今後の政府の交渉を縛らないと明言している[305]。
2013年3月15日、TPP交渉参加という形で決着が図られることとなった[306]。
2013年4月12日に決着したTPP交渉参加に向けた日米事前協議は大手各紙上でも『高い「入場料」』という言葉が飛び交い、米側に譲りに譲ったもの[307][308][309]となった。日本政府のTPP交渉担当者が「なんとしても7月中には交渉に加わりたいのだが……」とあせりの色を隠せない中での事前協議であり、交渉に入る前から通商条件で大幅な譲歩を迫られる可能性があった[310]が、現実のものとなった。焦点の自動車・保険分野では双方とも大幅譲歩であり、自動車分野では自動車関税について当面は乗用車・トラックの関税を維持した上、撤廃時期はTPPが認める範囲で最大限遅らせることで決着[311]、保険分野ではかんぽ生命のがん保険など新商品の申請を事実上凍結したため、投資家に訴える新規事業への参入が不可欠な2015年秋までの株式上場は計画の見直しが不可避[312]となり、政府が復興財源として期待していた日本郵政株式の売却収入4兆円が見通せなくなってしまった[313]。のみならず、非関税措置について9つの分野で日米間で継続協議[314]とされたため、1990年代に経験した日米構造協議、包括経済協議と同様に2国間の枠組みを使って日本に市場開放の圧力をかける構図が繰り返されることになった[315]。
2013年9月25日、ニューヨーク証券取引所で行った講演で、「もはや国境や国籍にこだわる時代は過ぎ去りました。世界の成長センターであるアジア太平洋。その中にあって、日本とアメリカは、自由、基本的人権、法の支配といった価値観を共有し、共に経済発展してきました。その両国が、TPPをつくるのは、歴史の必然です。」との見解を示した[91]。
2016年12月9日、参議院本会議で記名投票による採決を行い、TPP参加が決議された[316]。
しかし、2017年1月20日、第45代アメリカ合衆国大統領に就任したドナルド・トランプは、同日TPP離脱を表明した[317]。TPP発効条件が加盟12か国のGDPの85%以上を占める6か国以上の国内批准であり、アメリカのGDPは全加盟国の約60%を占めることから、TPP発効は困難となった。
日本政府はTPPに代わる域内経済協定を検討、2017年2月10日(米国時間)、安倍は初の日米首脳会談において、日米間の経済対話、これをさらにアジア太平洋地域に拡大する方向性を話し合った。訪米に同行した財務省関係者は、二国間自由貿易協定(FTA)に発展する可能性を否定しなかった[318]。
2017年3月1日の参議院予算委員会で、安倍は米国のTPP離脱に関し「日本の求心力を生かし、今後どのようなことができるかを米国以外の各国とも議論したい」と語った[319]。
労働市場の構造改革(日本版「ワッセナー合意」)
企業が賃上げを促進し、政府は賃上げ企業への優遇や失業者対策を進め、労働者は労働市場流動化に同意し失業増を受け入れるという日本版「ワッセナー合意」が構想されていることが明らかになった。ただし、オランダで起こったワッセナー合意は「労組は賃金の抑制」「政府は企業の社会保障負担を低減し労働者のための減税を実施」「経営者は仕事を分かち合い雇用を確保」という内容的には逆とも言えるものである[320]。
日本版「ワッセナー合意」は、むしろ第1次安倍内閣で提唱された労働ビッグバン(日本版オランダ革命)に近いものであり、日本維新の会のブレーンで小泉構造改革の中心人物であった産業競争力会議メンバー竹中平蔵の主張である「再就職支援金の支払いを条件に従業員の解雇を認めるといった解雇ルール」や「正規と非正規の中間的な雇用形態の導入」などが盛り込まれている。これについては、失業増を受け入れる労働組合はもちろん経済界も難色を示しているとされる[321][322]。竹中平蔵は第1次安倍内閣の際には、著書の中で「既得権益を失う労働組合や、保険や年金の負担増を嫌う財界の反対で頓挫した」と述べていた[323]。
治安政策
組織犯罪処罰法(いわゆる「共謀罪法案」)について、「国際社会で組織犯罪に対応していく役割を果たす上で早期に「国際組織犯罪防止法条約」を批准をする必要がある」として2007年1月25日召集の通常国会で成立を図るよう指示したが、世論や自民党内からの反発が強く、継続審議となった[324]。2017年5月19日、共謀罪の構成要件を改め「テロ等準備罪」を創設することを柱とする組織犯罪処罰法改正案が衆議院法務委員会で自民、公明の与党と日本維新の会の賛成多数で可決、23日に衆議院本会議で可決された。6月15日、参議院では会期延長によらず法案成立を目指した与党は法務委員会の採決を省略する「中間報告」を行う動議を提出し、同日未明の衆議院本会議で「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」(共謀罪の構成要件を改め「テロ等準備罪」を創設する改正組織犯罪処罰法)が自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した[325]。安倍は同法成立について「本法を適切に、そして効果的に運用」する旨、また東京オリンピック開催に触れ「一日も早く国際組織犯罪防止条約を締結し、テロを未然に防ぐために国際社会としっかりと連携していきたいと思います。そのための法が成立したと考えております。」と述べた[326]。2017年7月11日、同法が施行された[327]。また、改正組織犯罪処罰法施行により、同年8月10日国連本部に於いて、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)とTOC条約締結が前提条件となる人身取引議定書と密入国議定書、さらに国連腐敗防止条約が締結された。[328]
特定秘密の保護に関する法律
2013年中旬から安全保障などの情報のうち「特に秘匿するが必要あるもの」を「特定秘密」と指定し、情報にアクセス出来る者の適正評価の実施や漏洩した場合の罰則などを定めた特定秘密保護法の検討を開始した。当法案には国内外で議論を呼び、報道各社が行った世論調査では廃案・見送りが多数を占めるものが大勢を占めたが[329][330][331][332][333][334][335]、一部賛成が反対を上回るものもあった[336]。法案は、2013年11月に衆議院で、12月に参議院で採決された[337]。衆議院では与党に加えみんなの党も賛成したが、参院では直前の与党議員の発言などを受け[338]全ての野党が賛成しなかった[339]。その後、安倍政権の支持率は急落した[340][341]。この法案に対しては国連が重大な懸念を表明し[342][343]、海外メディアからは「報道の自由及び民主主義の根本を脅かす悪法」[344]、「日本で内部告発者を弾圧する立法が成立した」[345]、「日本が報道の自由を制限」[346]などと報じられた。元アメリカ国防次官補のモートン・ハルペリンは「知る権利と秘密保護のバランスを定めた国際基準を逸脱している」と法案を批判した[347]。一方で、アメリカ合衆国国務省副報道官のハーフは記者会見で、日本で特定秘密保護法案が成立したことについて「情報の保護は同盟における協力関係で重要な役割があり、機密情報の保護に関する政策などの強化が前進することを歓迎する」と述べ[348][349]、AP通信は「中国の軍事力増強に対抗するために強い日本を望む米国は、法案可決を歓迎している」と報じた[350]。
社会保障
中国残留孤児
中国残留孤児問題における訴訟では請求を取り下げられた原告団に面会し、新たな支援を検討していくことを確認した。
慈恵病院の「こうのとりのゆりかご」
- 2007年2月23日に、熊本市の慈恵病院が赤ちゃんポストの設置を計画していることについて、「ポスト」という名前や匿名で子供を置いていけるものだということに大変抵抗を感じると述べている[351][352]。
年金問題
- 年金記録問題では民主党の小沢一郎との党首討論で「消えた年金はどうするのか」という野党からの追及に対し「年金は消えたわけではない」として年金時効撤廃特例法案など具体的な救済案を提示した。該当者不明の年金記録5000万件の照合作業については「三千万人の方々とこの二千八百八十万件を一年間のうちに突合いたします」[353]「一年間で私たちはすべて突合を行うということをお約束をする」[353]と断言、当初2年程度を想定していた調査期間を前倒しすると表明し[354]、自民党の公式HPでも宣伝した。第166回国会本会議においても、「長年まじめに保険料を納めてきたにもかかわらず年金がきちんと給付されないという理不尽なことは、絶対にあってはなりません。このため、国民の視点に立って、できる限り速やかに、かつ、行うべきことはすべて行い、国民の不安の解消に最善を尽くしてまいります。」[355]と答弁した。
- メディアや専門家からは、その公約の実現性に対して当初から懐疑的な意見が出されていた[356]。社会保険庁は年金記録の照合作業を進めたものの、2008年3月末までに持ち主が判明するのは1000万人程度に留まり、名寄せ困難な記録が1975万件に達すると発表された(人数や件数は2007年12月時点での推計値)[357]。安倍の公約実現は絶望的となり、後任の首相である福田康夫が謝罪する事態となった[358]。内閣官房長官の町村信孝は「亡くなった方もいる。『最後の一人まで』ということはありえない。もとより無理」[358] と述べ、安倍の公約の問題点を指摘した。
- 2008年3月、社会保険庁の照合結果が公表され、1172万件分の持ち主が特定できたが、名寄せ困難な未解明記録は2025万件に達したことが明らかになった[359]。
介護施策について
2017年9月25日、衆議院解散演説において、自公政権で介護人材に対し月額47000円の処遇改善を実現したことに触れ、更に他の産業との賃金格差を無くすべく更なる処遇改善を推進することを表明した[360]。
子ども手当について
民主党の子ども手当に否定的であり、「WiLL」2010年7月号において、「民主党が目指しているのは財政を破綻させることだけではなく、子育てを家族から奪い取り、国家や社会が行う子育ての国家化、社会化です。これは、実際にポル・ポトやスターリンが行おうとしたことです」と糾弾している[250]。
医療制度
官民一体で創薬・再生医療を推進する「日本版NIH」の構想を提案した[361]。また、ビッグデータや人工知能を活用した「予防・健康管理」や「遠隔診療」の推進も表明している[362]。
経済政策
経済財政諮問会議を第2次安倍内閣で再開した[363][364]。
2014年に、アベノミクスといわれる以下の3政策からなる経済政策を開始した。
- 大胆な金融政策
- 機動的な財政政策[注 12]。
- 民間投資を喚起する成長戦略
安倍は、2015年11月に行われた民間の講演会において「GDPは、アベノミクスによって成長率がマイナスからプラスに転じた結果、500兆円まで回復している。以降、毎年名目3%以上成長が実現すれば、2020年ごろにGDP600兆円は十分達成できる」と述べた[365]。
2017年9月25日、衆議院解散演説において、「11年ぶりとなる6四半期連続のプラス成長、内需主導の力強い経済成長が実現」と述べ、雇用は200万人近く増加し、2017年春に大学卒業した学生の就職率は過去最高で、「この2年間で正規雇用は79万人増え、正社員の有効求人倍率は調査開始以来、初めて1倍を超えました。正社員になりたい人がいれば、必ず1つ以上の正社員の仕事がある」と述べた[366]。
原発政策
2006年12月22日、(第一次安倍内閣時)巨大地震に伴う津波が生じた場合の原子力発電所の安全性に関する質問[367]に対し、日本の原子力発電所は外部電源又は非常用所内電源のいずれからも電力の供給を受けられる設計であり停止した原子炉の冷却は可能であること、崩壊熱が除去できず核燃料棒が焼損した場合の原発事故について評価は行っていない旨、衆議院で答弁している[368]。
福島第一原子力発電所事故の影響で停止している、日本各地の原子力発電所について、2014年5月1日にシティ・オブ・ロンドンでおこなった演説の中で、安全基準を満たしたところから順次稼働させていく方針を表明した[369]。
財政再建
財政について、「成長せずに財政再建できるかというとそれは無理で、絶対に有り得ない」と述べている[370]。
消費税増税
消費税増税について、2012年自由民主党総裁選挙に立候補した5人による日本記者クラブ主催の公開討論会で「時期を間違えると結果として経済の腰を折ってしまう。デフレがずっと今と同じままなら上げるべきでない」と述べた[371]。2013年10月1日に正式に税率の8%への引き上げを表明[372]。
2013年10月1日、消費税増税の判断をこれまで保留してきた安倍は、「国の信認を維持し、持続可能な社会保障制度を次の世代にしっかりと引き渡していくため、14年4月1日に消費税を5%から8%に引き上げる判断をした」と言明した[373]。
再増税は2015年10月に予定されていたが、2014年6月24日のインタビューで安倍は「やっとつかんだ(デフレ脱却の)チャンスを逃してしまうかもしれないなら、引き上げることはできない」と述べ、11月発表の7〜9月期の実質国内総生産を待って最終判断を下す考えを示した[374]。8月9日発売の「文芸春秋」において、安倍は「経済成長こそが安倍政権の最優先課題であることを明言する」とデフレ脱却への決意を語った[375]。
2014年10月7日の参議院予算委員会で、安倍は「今の社会保障制度を次世代に引き渡し、子育て支援のために資金を国民に負担してもらうための消費税だ。仮に消費税率を10%に引き上げなかった場合、社会保障の予算は減ることになる」と述べた[376]。また、同日にIMFは、2015年10月に予定される10%への消費税率引き上げを予定通り実施するべきとの見解を示した[377]。
2014年10月17日、安倍はフィナンシャルタイムズのインタビューに応じ、増税で景気後退すれば歳入も減少して施策自体が無意味になると述べた[378]。11月13日、安倍は消費税率再引き上げの先送りを決めた上、次週に衆議院を解散する方針を固めた。1年半延期して2017年4月からとした[379]。11月18日、安倍は記者会見において、7月・8月・9月のGDP速報から「成長軌道に戻っておらず」、「デフレから脱却し、経済を成長させる、アベノミクスの成功を確かなものとするため」に、2015年10月1日に予定されていた消費税増税は1年半延期すべきことを表明した[380]。
2016年6月1日、安倍は記者会見において、「内需を腰折れさせかねない消費税率の引上げは延期すべき」という判断に基づき、2017年4月1日に予定されていた消費税増税は2年半延期すべきことを表明した。併せて、消費税増税の際は軽減税率を導入する旨を表明した[381]。
2017年9月25日、衆議院解散演説にて、社会保障制度を全世代型へ転換・子育て世代への投資のため、消費税の使途変更を表明した[382]。使途変更は、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する財政再建目標の達成が「困難になる」とし、事実上撤回した[383]。
歴史観
安倍談話
村山談話
総裁選を目前に控えた2006年9月7日、「村山首相談話」について、「基本的にその精神を引き継いでいく」とした。その一方で、2006年10月6日、衆議院予算委員会で、A級戦犯について戦争責任については「当時の指導者であった人たちについてはより重たい責任があるが、その責任の主体がどこにあるかということについては、政府としてそれを判断する立場にはない」旨を述べた[384]。2006年10月5日、衆院予算委員会で、東条内閣の商工大臣だった岸信介が対米英開戦の詔書に署名したことへの認識を問われ「指導者には祖父を含め大きな責任があった。政治は結果責任だから当然、判断は間違っていた」とも述べている[385]。
東京裁判については、第1次政権時代、「受諾しており異議を述べる立場にない」としていた[386]。第2次政権では、2013年2月12日の衆議院予算委員会にて、「大戦の総括は日本人自身の手でなく、いわば連合国側の勝者の判断によって断罪がなされた」と述べ、懐疑的な見方を示した[386]。しかし、同年5月には「日本が侵略しなかったと言ったことは一度もない」と述べ、村山談話を継承することを表明した[387]。
慰安婦問題
河野談話
日本のこれまでの歴史教育に異議を唱え、「新しい歴史教科書をつくる会」を支援して来た自民党内部の議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の事務局長を務めた(現在は顧問)。同会は特に「侵略戦争」や「慰安婦」問題の教科書記述に批判的であり、証拠もないまま旧日本軍による慰安婦の強制連行を認めた「河野談話」を発表した河野洋平を会に呼んで、談話の撤回を要求したこともある。1997年の国会でも、慰安婦の強制連行の根拠とされてきた吉田清治の証言が虚偽であることが判明したため、「河野談話」および教科書への「従軍慰安婦」の記述を載せることは問題であると指摘している[388]。自民党幹事長代理時代の2005年3月27日の講演会でも、「従軍慰安婦は作られた話」と語っている[389]。総理就任後の2006年10月5日には、「河野談話」を「私の内閣で変更するものではない」と発言[390]。
2007年3月1日、河野談話に関する記者の質問に「旧日本軍の強制性を裏付ける証言は存在していない」と発言[391]。米下院に提出された慰安婦問題をめぐる対日非難決議案について、同年3月5日の参院予算委員会において「この決議案は客観的な事実に基づいていません」「これは、別に決議があったからといって我々は謝罪するということはないということは、まず申し上げておかなければいけないと思います」と述べた[392]。この「(旧日本軍による)狭義の強制性を裏付けるものはなかった」という発言は、米国からも批判され、2007年3月16日の国会答弁で河野談話の継承に改めてふれ、「同情とおわび」に言及し、4月3日のジョージ・W・ブッシュとの電話協議で見解を説明する対応をとる[393][394][395]。4月27日にはBBCのインタビューに、英語で「極めて痛ましい状況に慰安婦の方々が『強制的に』置かれたことについて大変申し訳なく思う」[396]、「私たちは、戦時下の環境において、そうした苦難や苦痛を受けることを『強制された』方々に責任を感じている」[397] と発言(以上、和訳)[398]。同日、日本のメディアに日本語で「人間として心から同情する。首相として大変申し訳なく思っている」、「彼女たちが慰安婦として存在しなければならなかった状況につき、我々は責任がある」と発言[393]。これについて毎日新聞は、「今回の発言は日本側の「責任」も指摘することで、沈静化を図ったものとみられる。」と報じている[393]。
第2次安倍内閣発足後の2012年12月27日、河野談話について、見直しを視野に入れて検討をおこなう方針を示した[399]。
日米首脳会談での言及
ブッシュ大統領との2007年4月28日の日米首脳会談後の共同記者会見で、「慰安婦の方々にとって非常に困難な状況のなかで辛酸を舐められた、苦しい思いをされたことに対し、人間としてまた、総理大臣として心から同情しておりますし、またそういう状況におかれていたと言うことに対して、申し訳ない、と言う思いでございます」とあらためて謝罪の意を示した。ブッシュ大統領は「安倍総理の謝罪を受け入れた」と応じた。[400][401]。
安倍は2011年11月、この問題に関して「会談で従軍慰安婦問題は全く出なかった。そもそも日本が米国に謝罪する筋合いの話ではない」とアメリカメディアの報道は事実無根だと主張した[402]が、2013年5月に主張を修正し、実際には日米首脳会談で「元慰安婦の方々に、首相として心から同情し、申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と発言したことは認める答弁書を決定した[403]。
日韓合意
2015年12月28日の日韓外相会談にて、日本側は従軍慰安婦への日本軍の関与と日本政府の責任を認めて謝罪した上、日本側が元慰安婦を支援する財団に10億円を拠出する事で「最終的かつ不可逆的な解決」とする合意に至った[404]。これについて、「私たちの子や孫、そしてその先の世代の子供たちに謝罪し続ける宿命を背負わせる訳にはいかない」「今回の合意を踏まえ、日韓両国で力を合わせて、日韓新時代を開いていきたい」と発言した[405]。
靖国神社参拝
首相の靖国神社参拝について「国のために殉じた人たちに対して国のリーダーが尊崇の念を表するのは当然だ。お参りすべきだと思う」と述べている[406]。また、歴史認識を巡って反日騒動が起こった中国と韓国の態度を批判し、外国が靖国神社参拝について抗議するのは内政干渉だという見解を持っている[407]。
安倍は幹事長在任中の2004年・幹事長代理在任中の2005年には終戦の日(8月15日)に参拝を行った[408]が、官房長官在任中の2006年は4月15日朝、秘密裏に参拝を行った[408][409](「内閣官房長官 安倍晋三」と記帳し、ポケットマネーで玉串料を収めた)[409]。安倍は同年8月4日の記者会見で、この件に関し「参拝したかしないかについては申し上げるつもりはない」と述べた[409]。
第1次安倍内閣発足による首相就任後も参拝を続ける意向を示し、2007年1月17日の自民党大会で決定された運動方針でも「靖国参拝を受け継ぐ」ことが明記されたが、外交問題や政治問題になるのを避けるため自身の参拝については明言しない考えを改めて示した。首相在任中は参拝を行わなかったが、安倍はこれについて首相退任後に「『主張する外交』を展開する中で、日本のための将来の布石を打つため大きな決断をした」と説明している[406]。
2012年9月14日党総裁選候補者による共同記者会見で安倍は「首相在任中に参拝できなかったことは、痛恨の極みだ」と述べ、再び首相に就任した場合の対応について「そのことから考えていただきたい」と語った[410]。
第2次安倍内閣発足による首相再任後、2013年の春季および秋季例大祭[411][412]と終戦記念日[413]の参拝はいずれも見送った。
首相在任中の靖国神社初参拝
内閣発足からちょうど1年となる2013年12月26日、第1次時代も含め首相在任中としては自身初の参拝を[414]、中国・アメリカに外交ルートを通じて参拝の連絡をした上で参拝した[415]。安倍はモーニング姿で本殿に参拝し、「内閣総理大臣 安倍晋三」名で白い菊を献花した。靖国神社境内にある世界の全ての戦没者を慰霊する「鎮霊社」にも参拝した。その後、「恒久平和への誓い」と題した「首相の談話」を発表。談話を英訳し、世界に向けてメッセージを発信した[415]。
参拝後、記者団に『御霊安らかなれと、手を合わせて参った。この1年の安倍政権の歩みをご報告し、二度と再び戦争の惨禍によって人々が苦しむことのない時代をつくるとの誓い、決意をお伝えするためにこの日を選んだ。戦場で散った英霊のご冥福をお祈りすることは世界共通のリーダーの姿勢だ。中国、韓国の人々の気持ちを傷つけるつもりは毛頭ない。中韓両国首脳に直接説明したい』などと語った[415][416]。
この参拝について、人民日報(中国共産党中央委員会機関紙)系の新華経済は日本新聞網の記事を引用し『安倍首相は外交ルートを通じて中韓首脳との会談を模索しており、(2013年)12月28日訪中のスケジュールで調整が進められていたそうだ。だが、これを「単なる政治的パフォーマンスであり、尖閣問題の解決策の提示はない」と判断した中国側が(2013年12月)20日に安倍首相の訪中を拒否。中国に続いて韓国も否定的な返答を寄せたという。今回の靖国参拝はこれに対する“報復”ではないか』と報じた[417]。
世論調査・ネット調査
安倍の2013年12月26日の靖国神社参拝について、以下の様な世論調査結果が報じられている。
朝日新聞は2013年12月30日の朝刊30面で、安倍のこの靖国参拝後の世論調査「日本の首相が靖国神社に参拝することに賛成ですか。反対ですか。」の質問に対し、20歳から29歳の回答者で支持60%・不支持15%、30歳以上の回答者で支持59%・不支持22%という結果であったと報じた[418]。また、同調査における内閣支持率調査「安倍内閣を支持しますか。しませんか。」の質問に対し、20歳から29歳の回答者で支持53%・不支持33%、30歳以上の回答者で支持55%・不支持33%という結果であったと報じた[418]。朝日新聞は2014年1月25日から26日にかけての定例世論調査でも靖国神社参拝について質問しており、この時は「参拝したことはよかった」は41%で、「参拝するべきではなかった」が46%であった[419]。
共同通信社は2013年12月28・29日に全国緊急電話世論調査を実施し、安倍の参拝について「よかった」43.2%、「よくなかった」47.1%であり、内閣支持率は55.2%(前月比1.0%増)、不支持率は32.6%(前月比0.4%減)であったと報じた[420]。
産経新聞社とFNNの合同世論調査では、靖国神社参拝について、「評価しない」(53.0%)との回答が「評価する」(38.1%)を上回った。ただし、20代と30代では、「評価する」という回答が、「評価しない」という回答を上回っている[421]。
批判
安倍の2013年12月26日の靖国神社参拝に対し、以下の様な批判がある。
- 米国ホワイトハウスは安倍のこの靖国神社参拝について声明などを一切発表しなかったが[422]、米国大使館は2013年12月26日に「日本は大切な同盟国であり友好国であるが、近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに失望している」との声明を出した[423][424]。
- 米国国務省サキ報道官は「靖国参拝に関する声明を出すかどうか」の質問に「在日米国大使館の声明をみてほしい」と答えた[422]。
- 2013年12月30日、サキ報道官は米国大使館が同年12月26日に出した声明[423]における『失望している(disappointed)』という表現について、『「失望」という言葉は安倍の靖国神社参拝そのものに論評を加えたものではなく、中国や韓国との関係悪化を懸念したものである』[425][426]、『意見の相違がある時に互いに正直に発言できるのは、緊密な関係の証し』[427]、『日本は大切な同盟国で友好国であり、(今回の安倍の靖国神社参拝は)日米関係全体に影響はない』[428]などと述べた。
EU(欧州連合)の報道官は、靖国参拝に対して懸念を表明し[429]、日中韓各国に対し「EUは、緊張を高める行動を避け、外交で争いを解決する必要性を常に強調してきた」と訴え、地域の長期的な安定に向け建設的な関係を築くよう促した[430]。- 中国と韓国の駐日大使も安倍の参拝に抗議した[431]。
韓国最大手新聞の朝鮮日報は『日本の大手6紙のうち、朝日、毎日、日本経済、東京の4紙は社説で安倍首相を批判した。「平和主義」を守ろうとする日本国民と安倍首相を切り離し、日本国内で良心的な声を高めるには、韓国は自らの対応を単なる反日で終わらせるのではなく、より高度な次元に高める必要がある。日本の国内外で安倍首相の批判を高めその立場を失わせれば、この脱線にも必ずブレーキがかかるだろう。』と批判した[432]。- 台湾の馬英九総統は「中華民族の一人として、日本政府が周辺国の歴史の傷を顧みず、こうした行動をとったことは理解しがたく失望した」と自らのフェイスブックに投稿した。その後も馬暁光報道官が「第2次大戦後の国際秩序に対する挑戦で、平和を愛する全ての人が断固反対するのは当然だ」などと述べている[433]。
共同通信社は、米国ウォール・ストリート・ジャーナルが「日本の軍国主義復活の恐怖を、自国の権益拡大の口実に使いたい中国への贈り物」と批判したと報じた[434]。
民主党代表の海江田万里は「過去の日本の歴史の負の側面とは一線を画すべきだ。日本の主体的な判断として大局的な立場にたって参拝を自重すべきだ」と述べ[435]、靖国神社が日本の歴史の負の面であるとの認識を示し安倍を批判した[435]。- ロシア外務省情報局長のルカシェビッチは26日、声明を出し、「このような行動には遺憾の意を抱かざるを得ない」と批判した[436]。中国外相の王毅とロシア外相のセルゲイ・ラブロフは12月30日、電話会談し、靖国神社参拝を共に批判した上で、歴史問題で共闘する方針を確認した。王は31日に韓国外相の尹炳世、米国国務長官のジョン・ケリーとも相次いで電話会談。各国外相との会談で、参拝批判の国際世論づくりを展開しているとみられる。ラブロフは「靖国神社の問題ではロシアの立場は中国と完全に一致する」と応じ、日本に対し「誤った歴史観を正すよう促す」と主張した。王は30日、ドイツ外相のフランク=ヴァルター・シュタインマイアー、ベトナム副首相兼外相のファム・ビン・ミンとも電話会談、「日本の問題」を取り上げたという[437]。
- 韓国外務省報道官は2004年1月23日の定例記者会見で、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席した総理大臣の安倍晋三が靖国参拝に理解を求めたことについて「参拝しない韓日友好を語るのがいかに矛盾しているか、韓国だけでなく、全世界のメディアと知識人、良識ある人が声を上げている。この声が聞こえないのが理解しがたい」と改めて批判した。報道官は「参拝は、帝国主義時代に日本が犯した過ちを反省しないのと同じだ。首相ら指導者が靖国神社を参拝しないことが、韓日友好、地域の安定の出発点だ」と強調した[438]。
コロンビア大学教授のジェラルド・カーティスは講演で、安倍晋三の参拝について「日本の国益にとても高いコストを生む」と批判するいっぽう、再度参拝するかどうかは「中国との取引材料となる」と語った。カーティスは「安倍首相は1年間参拝を自制したが、中韓両国からなにも得られなかった。参拝したから関係がさらに悪化するわけではない」と指摘。今回の参拝に対し、中国の態度は比較的抑制されていると述べ、再参拝の可否を対中関係の改善次第とすることで、局面のてこにできるとの考え方をしめした。参拝に対する米国政府の「失望」表明について、「安倍首相はショックだったかもしれないが、世界は変化している。中国台頭という新たな現実に取り組まなければならない」とした[439]。- 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)は23日、複数の米政府当局者の話として、安倍晋三が靖国神社参拝を繰り返さない保証を、米政府が日本政府に非公式に求めていると伝えた。日中、日韓関係がさらに悪化することを懸念しているとみられる。同紙によると、米政府は参拝後にワシントンと東京で開かれた日本側との「一連の会談」を通じ、近隣諸国をいら立たせるさらなる言動を首相は控えるよう要請。日米韓の連携を阻害している日韓関係の改善に向けて韓国に働きかけるよう促し、従軍慰安婦問題に対処することも求めた。さらに今後、過去の侵略と植民地支配に対する「おわび」を再確認することを検討するよう首相に求める考えだという。米国務省副報道官のハーフは23日の記者会見で、同紙の報道について問われ、「事実かどうか分からない」と述べた[440]。
エピソード
この節には、過剰に詳細な記述が含まれているおそれがあります。百科事典に相応しくない内容の増大は歓迎されません。内容の整理をノートで検討しています。(2013年2月) |
政治資金
2015年に、政治資金規正法で禁止されている、国の補助金をもらった企業からの1年以内の献金(寄付)を受けた可能性があることが、明らかとなった。それに対し、安倍は「当該会社が国から補助金を受けていたことは知らなかった。まず事実関係を調査する」とし、政治資金規正法改正も視野に入れた検討の必要性について言及した。献金をした企業は、それぞれ、「お答えを差し控える(東西化学産業)」、「(補助金の性質から)政治資金規正法に抵触しない(電通)」、「例外規定の『試験研究』に該当し、法的問題はない(宇部興産)」とコメントしている。同種の献金は、与野党の党首以下、多くの政治家や企業が意図せず違反していた可能性が明らかとなっているが、献金禁止規定の見直しの必要性が言及されている[441]。
- 『週刊現代』による脱税疑惑報道
- 『週刊現代』は2007年9月29日号(9月15日発売)において、安倍が相続税を脱税していたとの記事を掲載した。内容は「父・晋太郎が生前、自身の指定政治団体に「安倍晋太郎」名義で寄付した6億円以上の政治資金を、66の政治団体に分散させて引継ぎ、3億円を脱税した」というものである[442]。『週刊現代』は安倍の辞意表明当日に、以前から脱税疑惑についての取材を安倍に申し入れていたことを明らかにした[443]。
- 安倍の事務所は「事実無根である」と反論し、発行元の講談社に対して、当該記事を掲載しないよう「警告文書」を送った。事務所の関係者によると、「父である晋太郎が個人資産を政治団体に寄付し、相続税の支払いを免れたのではないか」との質問が『週刊現代』側からあったという。同事務所は、安倍の辞意表明当日の『毎日新聞』夕刊がこの一件について報じたことを受け、自民党本部の記者クラブ(本部平河クラブ)にて、「収支報告書には、あくまでも第三者からの寄付を晋太郎氏名義で記載しているにすぎず、個人献金ではないので相続税の問題はない」とする内容の文書を配布し、疑惑を全面的に否定した[442]。これについて、「高瀬真実」のペンネームで『週刊現代』の当該記事を執筆したジャーナリストの松田光世は、「その説明が正しいなら、安倍事務所は『安倍晋太郎』という偽名を使って政治資金収支報告書への虚偽の記載を毎年続けていたことになる」と述べている[442]。
- 『週刊現代』は安倍の事務所宛てに9月12日を回答期限とした質問状を送付したが回答は無いまま、12日14時に会見で安倍の辞意が表明された[444]。
- 安倍は首相再任後の2014年11月4日、社民党党首の吉田忠智が参議院予算委員会で本件に言及し、週刊誌の記事を根拠にして自発的納税を促したことに対し、重大な名誉棄損に当たるとして、吉田を非難した[444][445]。
後援会事務所等への被害
2000年(平成12年)6月28日、安倍の後援会事務所(山口県下関市)の窓ガラスが割られ、屋内外に火炎瓶2本が置かれた[446]。これに先立つ同月14日には同事務所近くにある催事場駐車場の壁、同月17日には安倍の自宅(同市内)の倉庫兼車庫にそれぞれ火炎瓶が投げられ、自宅の事件では車2台が焼ける被害もあった[446]。事件が起きたのは、安倍が三選を目指した衆院総選挙(同年6月25日投開票)の最中であった。事件の3年後の2003年(平成15年)11月、福岡・山口両県警の合同捜査本部は、指定暴力団(後の特定危険指定暴力団)工藤會系高野組(本部・福岡県北九州市)の組長ら6人を、非現住建造物等放火未遂容疑で逮捕し、工藤会本部事務所(同市内)などを家宅捜索した[447]。同事件では、主犯格の組長に懲役20年[448]、実行犯らに懲役8年から13年の判決が確定した[449][450][451]。なお、朝日新聞は、同事件では、1999年(平成11年)に行われた下関市長選挙に際して安倍が推した候補者を支援した土地ブローカーが、被告人の一人となっていると報じている。公判の検察側立証で、この被告人は、安倍が推した候補者の支援活動に当たって当時の安倍の秘書に現金を要求して300万円を工面させ、その後も金を要求したが、安倍側が応じなかったことから、暴力団と共謀して報復したという証言を報じている[452]。
災害への対応について
- 新潟県中越沖地震
- 2007年7月16日、新潟県沖の日本海でマグニチュード6.8の新潟県中越沖地震(最大震度6強)が発生した。第21回参議院議員通常選挙の遊説中に地震発生を知らされた安倍は、いったん官邸に戻ってから、震度6強を記録した柏崎市を訪問した。余震の発生が懸念される中で首相自らが震源地に程近い現地を訪問したことは、危機管理の観点から議論を呼んだ。
- 元経済企画庁長官の堺屋太一は「現場に行ったときに果たして正確な情報が得られるのか。総理大臣は通信情報の拠点におられた方が良かった」[453]と指摘し、衆議院議員の加藤紘一は「担当大臣を派遣するっていうのが本来の第一歩だと思います。総理大臣は大将ですから、一番官邸にいて指示を出すっていうのがいい対応」[453]と指摘した。読売新聞は、「首相が発生直後に行けば、現場が首相への対応に人手を割かなければいけなくなり、行っても混乱するだけだ」[454]との論評も報じている。
- 平成26年豪雪
- 2014年2月に雪害が発生。政府は降雪が厳しくなる前の14日に災害警戒会議を開いて対応し、15-16日には、山梨・長野両県知事の要請に基づき、自衛隊を派遣した[455]。しかし、17日に大雪で車が立ち往生したまま除雪車が進入できない状況となり、産経新聞では「政府の対応が後手に回った」と報じられた[455]。17日の記者会見において、民主党の松原仁は、安倍が前日の16日夜に支援者と天ぷら料理店で会食したことに触れ、「緊張感が乏しい。16日の段階で雪の中で孤立している集落や車があった。残念だ」と述べた[455]。また、海江田万里は、「初動が遅れたというそしりを免れない」と批判した[455]。J-CASTニュースによると、三宅雪子や数人の著名人がTwitter上で安倍の会食を批判したところ、安倍の支援者等から「天ぷら屋で会食止めて官邸で弁当食ったら何か事態が好転するのか?」などの疑問や反論が寄せられて炎上し、批判者はTwitterで釈明をおこなった[456]。野党の批判を受け、安倍は、同日の衆院予算委員会で、「関係自治体と連携を密にし、関係省庁一体となって国民の生命、財産を守るため、対応に万全を期す」と述べている[455]。
福島第一原発事故
2011年5月20日、自身が発行するメールマガジン[457]にて、東日本大震災によって発生した福島第一原子力発電所事故における海水注入対応について当時の首相・菅直人に対し「やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです。」と発信し、「菅総理は間違った判断と嘘について国民に謝罪し直ちに辞任すべきです。」と退陣を要求した。しかし、事故当時の福島第一原発所長・吉田昌郎の判断により実際には海水注入は中止しておらず[458][459]、菅から中止の指示があったという指摘についても、翌2012年の国会の東京電力福島原発事故調査委員会において、中止の指示を出したのは総理大臣の菅ではなく、官邸へ派遣された東京電力フェローの武黒一郎によるものだったと武黒本人が主張している[460][461]。これに関し、菅は安倍に嘘の情報を流されたとして、謝罪と訂正を要求していたが[462]、安倍はこれに応じずメルマガの掲載を続けたため、2013年7月16日、菅は東京地裁への提訴に踏み切った[463][464][465][466]。2015年12月3日、東京地裁は「記事は重要な部分で事実であった」としてその請求を棄却した[467]。裁判長の永谷典雄は、「菅氏に東電の海水注入を中断させかねない振る舞いがあった」「(当時)野党議員であった安倍氏が首相の責任を追及したものであり、人身攻撃とは言えない」と指摘した[468]。翌日、菅はこの判決を不服として東京高裁に控訴した[469]。
また、当時安倍は情報の出所として「(経済産業省の)柳瀬か(保安院の)寺坂に聞けば分かる」と記者達に話していたため、柳瀬唯夫に対して多くの記者達から「注水を止めたのは総理の指示か?」という問い合わせがあったという。柳瀬にとってその問い合わせは寝耳に水であり「ありえません」「安倍さんの言っていることは嘘です」と返答したという[470]。
タイムズは、首相再就任後の2013年、福島第一原発の汚染水が大量に土壌や海洋に流出していることが判明したことに関して、具体策の提言はないが政府の介入により対策を行う意向を安倍が示したと報じている[471]。
財務省の決裁文書改竄問題
2018年3月19日、森友学園への国有地売却に関する財務省の決裁文書改竄について「理財局内や(近畿)財務局内の決裁文書の存在すら知らない。指示のしようがない」と述べ、関与を否定した。一方「行政府の長として責任を痛感している。最終的な責任は私にある」と陳謝した。本件に自身や配偶者(安倍昭恵)が関与しているなら「首相も国会議員も辞める」とする自身の答弁が改竄に影響を与えたとする見方も否定した[472]。同月26日の党役員会で、衆参両院の予算委員会で行われる佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問に触れ、「地検の捜査にも協力しながら、政府として徹底した調査を急がせたい。政府、国会、それぞれの立場でしっかりと全容を解明し、膿を出し切ることが重要だ」と述べた[473]。
発言
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原子爆弾の保有・使用
2002年2月、早稲田大学での講演会(非公開)における田原総一朗との質疑応答で、「小型であれば原子爆弾の保有や使用も問題ない」、と発言したと『サンデー毎日』 (2002年6月2日号)が報じたが、安倍は同年6月の国会で「使用という言葉は使っていない」と記事内容を否定し、政府の“政策”としては非核三原則により核保有はあり得ないが、憲法第九条第二項は、国が自衛のため戦力として核兵器を保持すること自体は禁じていないとの憲法解釈を示した岸内閣の歴史的答弁(1959年、1960年)を学生たちに紹介したのであると説明した[474]。2016年4月には鈴木貴子の質問主意書に対し「憲法9条は一切の核兵器の保有や使用をおよそ禁止しているわけではない。しかし核拡散防止条約及び非核三原則に基づき、一切の核兵器を保有し得ない」とする答弁を閣議決定した[475]。
民主党を「中国の拡声器」
2002年5月19日中国・瀋陽総領事館北朝鮮人亡命者駆け込み事件に関して、日本国外務省の不手際を調査するため中国を訪問した民主党を、テレビ番組において「中国の拡声器」と批判した。安倍は2日後の5月21日、参議院外交防衛委員会において、民主党の激しい反発に遭い、発言を撤回した[476][477]。
辛光洙の保釈署名者の土井たか子と菅直人に対する不適切発言
2002年10月19日広島市・岡山市の講演において「1985年に韓国入国を図り逮捕された辛光洙(シン グァンス)容疑者を含む政治犯の釈放運動を起こし、盧泰愚政権に要望書を出した人たちがいる。それが土井たか子、あるいは菅直人だ」「この2人は、スパイで原さんを拉致した犯人を無罪放免にしろといって要望書を出したという、極めてマヌケな議員なんです」と発言した。この発言は両議員から抗議を受け、同月21日の衆院議院運営委員会の理事会で取り上げられ、社民党の日森文尋衆院議員が抗議した。また、土井党首も記者団に「人格とか品格の問題にかかわる」と不快感を示した。結局、安倍が自らの発言を「不適切」と認めたことで、同月25日の衆院議院運営委員会の理事会にて決着した。大野功統委員長が安倍に「適切さを欠く表現があったと思われるので注意して欲しい」と伝え、安倍は「官房副長官という立場を考えると、不適切な発言だったので、今後十分注意する」と述べたという。その後、大野委員長が、このやりとりを理事会で報告し、民主、社民両党も了承した[478]。
日韓図書協定
2011年の日韓図書協定について、「国民や歴史に対する重大な背信だ」と批判した[479]。
2015年衆議院予算委員会において野次「日教組どうするの!」
2015年2月23日の衆議院予算委員会において、民主党議員の質問中に、質問内容と全く関係なく「日教組どうするの!」という野次を飛ばし続けた[480][481]。これについて、「なぜ日教組と言ったかといえば、日教組は補助金をもらっていて、教育会館から献金をもらっている議員が民主党にいる」などと理由を説明した[482]。しかし、後にそれが事実に反することを指摘され、「私の記憶違いにより、正確性を欠く発言を行ったことは遺憾で訂正申し上げる。申し訳ない」と、それが誤りであることを認め撤回した[482]。一方、野次で質疑を遮ったことについては謝罪などのコメントはしていない[483]。
最高責任者に関する発言
2014年2月13日、自民党の総務会において「最高責任者は私です。私が責任者であって、政府の答弁に対しても、私が責任を持って、その上において、私たちは選挙で国民から審判を受けるんですよ」と発言した。この発言について、自民党の村上誠一郎は「総理の発言は、選挙で勝ったら、拡大解釈で憲法を改正しても、何をしても良いのかと理解できる。その時々の政権が解釈を変更できることになる」と、自民党の船田元は「拡大解釈を自由にやるなら、憲法改正は必要ないと言われてしまう」と、それぞれ意見した[484][485][486]。
自衛隊について「わが軍」と発言
2015年3月20日、参議院予算委員会で自衛隊訓練の目的を尋ねられた際、「我が軍の透明性を上げていく、ということにおいては、大きな成果を上げているんだろうと思います」と語った[487][488]。30日の衆院予算委員会で後藤祐一の質問に対し、安倍は「共同訓練の相手である他国軍と対比するイメージで自衛隊を『わが軍』と述べたわけで、それ以上でもそれ以下でもない」と改めて説明し、「自衛隊の位置づけに関するこれまでの政府見解を変更するものではないし、そのような意図はない」、「軍と呼ぶことは基本的にない」と主張した。また、「言葉尻をとりあげて議論をする意味はあまりない。もう少し防衛政策そのものを議論した方が生産的だ」、「こうした答弁により大切な予算委員会の時間がこんなに使われるならば、いちいちそういう言葉は使わない。ただそれを使ったからどうこういうものではない」と述べた[489]。
衆議院特別委員会において野次「早く質問しろよ」「大げさなんだよ」
2015年5月28日、衆議院平和安全法制特別委員会において、辻元清美の質疑中に「早く質問しろよ」「大げさなんだよ」とやじを飛ばした[490][491][492][493]。批判を受け、同6月1日の同委員会において「重ねておわび申し上げる。真摯に対応していく」と謝罪した[494]。
「私は立法府の長」発言
2016年5月16日、衆議院予算委員会で自身を指して「立法府の長」と発言し、翌17日の参議院予算委員会でも「立法府の私」と発言した[495]。23日の参議院決算委員会で、「もしかしたら言い間違えていたかもしれない」と釈明した[496]。産経新聞社はこの「立法府の長」発言を2016年の国会の名言6位に取り上げた[497]。沖縄タイムスは社説にて、行政府の長を言い間違えたのではなく、何でも可能であるという全能さを表しているのではないか、謙虚さが必要であると批判している[498]。一方、立命館大学教授の大西祥世はこれを、議院内閣制のもとで国会の安定多数を維持している首相の安倍が衆議院・参議院・内閣の「「三位一体」体制の長であるという意味合い」を示す発言であると評した[499]。
「デフレ脱却していないがもはやデフレではない」発言
国会内で「もはやデフレではない」とデフレ脱却を主張したが、同時に「デフレ脱却道半ば」と付け加えたため野党議員より意味不明と非難された[500]。
「訂正でんでんには当たらない」発言
2017年1月24日の参院代表質問にて、元民進党の蓮舫議員の発言に対して、「訂正でんでんという指摘は全く当たらない」と云々(うんぬん)を誤読したと思われる答弁をして話題となった[501][502]。この発言について小林よしのりは、「どや顔で言った迷せりふ」「でんでん対案を出さずに批判するのはでんでん理解できない。でんでん無視無視である。と言いたかったのだろう」と語っており、2017年流行語大賞になると主張した[503]。
「エンゲル係数上昇は食生活の変化」発言
2018年参院予算委員会の場で民進党の小川敏夫が安倍の経済政策について、「エンゲル係数が顕著に上がっている」と経済指標から庶民の生活の貧困具合を指摘したが、安倍晋三は「エンゲル係数上昇は物価変動、食生活や生活スタイルの変化が含まれている」「景気回復の波は全国津々浦々に」とアベノミクスによる景気回復を主張した。経済評論家の斎藤満はこれについて、「テストなら0点」「食費は生活の基礎的な部分。支出に占める割合が大きければ大きいほど、生活に余裕がないという指標」「今や外食の単価が下がり、ワンコインでおつりがくることもある。外食費は多くない。安倍や麻生は1万円を超えるステーキを食べに行く金持ちだから、自分と国民の違いが分からない」と答弁について指摘した[504]。これに関連してウィキペディアでは、「エンゲル係数」のページが「エンゲル係数は重要な指標ではない」などと改竄されたのを巡って、編集合戦となったことが話題となった[505]。これを受けて岩上安身は「ウィキすらが即座に歪められる怖さ。ネット市民は、随所で知的防衛戦線を張り続けないと、無知と詭弁と卑劣とデマの連合軍に押し切られる」とツイートした[506]。
「総理なので森羅万象すべて担当している」発言
2019年2月6日、参議院予算委員会において、毎月勤労統計の不正調査問題に関する足立信也の質問に対し、「総理大臣でございますので、森羅万象すべて担当しておりますので…」と発言し話題となった[507][508]。
人物
人物像
- 座右の銘
吉田松陰の「至誠にして動かざるもの、これいまだあらざるなり」[509]。「初心忘るべからず」[510]。憲政記念館には至誠(真心)と揮毫している。
- 愛読書
古川薫の『留魂録の世界』(留魂録は吉田松陰の著作である)[509]。
- 尊敬する人物やファンである人物
幕末期の思想家、吉田松陰を尊敬する。「晋三」の名は、松陰の松下村塾の門下生だった高杉晋作から付けられた[511]。- 内閣官房副長官時代に仕えた小泉純一郎、森喜朗を尊敬する対象としている[512]。
石原慎太郎には「政治家にいないタイプ」「つねに挑戦的でかつイケメン」などの理由で嫉妬しており、学生時代には父にあうために来訪した石原に『太陽の季節』文庫本にサインを書いてもらった際にもっと新しいものを買えと全く媚びない言葉を掛けられて憧れを感じている[512][513]。
- ファッション
- 寒がりである[514]。クール・ビズの一環である「国会内はワイシャツ・ノーネクタイ」が導入された当初は背広で通していた[515]が、東京新聞の政治ネットモニター調査では、クールビズが似合う政治家第2位となった[516]。2002年、清潔感を大切にしたファッションを心がけていることが評価され、政治経済部門でベストドレッサー賞を受賞[注 13]。安倍は「いつも私の服をチェックしてくれる妻が受賞したようなもの」とコメントした[517]。
- アーチェリー
- 大学時代にアーチェリーをしていた安倍は、2005年に全日本アーチェリー連盟の第6代会長に就任している(前任は同じく首相経験者の海部俊樹、父の安倍晋太郎も第4代会長である)[518]。2007年3月25日、連盟から再び会長に推薦され[519]、これを受託したため、14日の理事会で2期目を務めることとなった[520]。首相であるため、職務は副会長が代行することになっている[521]。
- 2006年4月28日のフジテレビのバラエティ番組では、明石家さんまとアーチェリーで対決、その腕前をテレビで初めて披露した[522]。
- ゴルフ
ゴルフも趣味の一つであり、アメリカ留学中も、現地で知り合った友人とプレーしていた[523]。
- 野球
- 少年時代、プロ野球・サンケイアトムズ(現:東京ヤクルトスワローズ)のファンだった[513]。一方で、神戸製鋼所に勤務していたことから「あの会社は阪神ファンじゃなきゃ生きていけない」と冗談めかして語るように、阪神タイガースにも愛着があり[524]、2017年の第48回衆議院議員総選挙では公明党の赤羽一嘉氏の応援に神戸市北区の岡場駅前で行われた街頭演説にて「今日(10月14日)のクライマックスシリーズで阪神タイガースが勝ちました」と発言している[要出典]。
- また、アンチ巨人であることも公言しており、巨人出身の政治家であった堀内恒夫に食ってかかったこともある[525][526]。
- 食べ物・調理
- かつては寝る前にビデオを見ながら、アイスクリーム[527]やせんべいを食べるのが好きだったが、妻の助言でやめた(2017年時点[528])。(コース料理よりも)自分で注文するアラカルトが好きと、2012年に語っている[529]。プライベートのバーベキューなどでは、タバスコ入りのピリ辛焼きそばをふるまうことがある[530][531]。
- お笑い
お笑いが好きであり、特にタモリのファンでフジテレビ系「ボキャブラ天国」をよく見ていた[532]。これもあり、自らと考えが一部異なる爆笑問題の番組に出演したり、桜を見る会で一緒に写真を撮ったりもしている[533][534]。- 喫煙
- 自らの喫煙歴について、「24、25歳ぐらいまでたばこを吸っていて、その後やめた」と打ち明けたうえで、「吸っている時には受動喫煙の立場に立たされる人が不愉快であるとは気づかないが、やめたとたんにそれがよく分かる」と述べた[535]。
関係団体
- 安晋会
- 「安晋会」も参照
- 日本会議国会議員懇談会
- 「日本会議#日本会議国会議員懇談会」も参照
- 「右派」「保守系」とされる団体では国内最大級の組織であり、安倍と思想的にも近いと朝日新聞で報道された[536]。事務総長の椛島有三、政策委員の伊藤哲夫、役員の高橋史朗は、朝日新聞で安倍のブレーンであると報道されている[537]。安倍は日本会議国会議員懇談会の特別顧問である[538]。
交流関係
- 天宙平和連合
- 官房長官当時の2006年、統一協会系列の団体である「天宙平和連合」(UPF)の集会のイベントに安倍を含む数人の自民党議員が祝電を寄せたことが新聞、雑誌等で伝えられた。後に「私人としての立場で地元事務所から『官房長官』の肩書で祝電を送付したと報告を受けた。誤解を招きかねない対応で、担当者に注意した」とのコメントを出した[539]。
- 公明党・創価学会
- 『アエラ』によると、晋三は、小選挙区制度が導入されて二大政党制に近づけば、創価学会は自分から離れてゆくとの判断から、1994年に創価学会と公明党に批判的な宗教団体や有識者で結成された「四月会」(代表幹事:俵孝太郎)の集会などに参加したこともあったと報じられている[540]。また、創価学会に関する自民党の勉強会『憲法20条を考える会』に参加した次の日、自身の選挙区の公明党の大幹部から電話で釘を刺されたことで、政治的野望を持った創価学会が政界での影響力を拡大して行くことを危険視していたという[540]。
- 首相就任直前の2006年9月22日に極秘裏に東京都内の創価学会の施設で、池田大作創価学会名誉会長と会談を持ったと主要新聞[541]「『産経新聞』を除く」をはじめ各種メディアが伝えた。安倍は池田に父との生前のつきあいについて感謝の意を表し、「参院選での公明党や創価学会の協力を要請」し、池田は「協力を約束した」という[542]。また、「日中関係の早期改善が重要との認識で一致」したという[542]。同月30日には公明党大会に来賓として出席し、祖父も父も「公明党とは交友関係が深かった」として「何か特別な運命を感じる」と語った[542]。
- その後、国会で池田と面会した事実があったかという野党の質問に対して、安倍は「そういうことはございません。」と答弁した[543]。2007年2月13日の衆議院予算委員会でも同様に否定した[544][545]。
友人
- アグネス・チャン
- 20代から30代の頃にアグネス・チャンの熱心なファンであった[546]。チャンとは外交官秘書時代にテレビ番組で知り合い[547]、以来親交がある友人で、よく食事をともにしている[548][549][550][551]。チャンは安倍の結婚式に出席して祝辞を述べ[551]、「草原の輝き」を歌った[547]。安倍も彼女の結婚式に出席したが、婚約の知らせを聞いた時にはがっかりしたという[546]。また、2007年にはチャンのデビュー35周年を記念するアルバムのために、安倍は「平和」をテーマにした歌詞を作詞した[548][549]。
加計孝太郎 — 学校法人加計学園理事長
- 政治家になる前からの友人である[552]。
家族・親族
- 先祖に安倍宗任、平清盛、平知盛、佐藤忠信ら。安倍家は安倍宗任の子孫の娘が平知盛の子の平知貞に嫁ぎ産んだ子の末裔だというが、平家の家系図には平知盛の子に平知貞という人物は存在しない。佐藤忠信が佐藤家の先祖であるというのも口伝である。[要出典]
- 五世祖父 - 佐藤信寛(政治家)
- 高祖父 - 大島義昌(軍人・陸軍大将、子爵)
- 曾祖伯父 - 安倍慎太郎(政治家)
- 祖父 - 寛(政治家)
- 祖母 - 本堂静子(本堂恒次郎の長女、大島義昌の孫娘)
- 祖父 - 岸信介(官僚、政治家・首相)
- 大伯父 - 佐藤市郎(軍人・海軍中将)
- 大叔父 - 佐藤栄作(官僚、政治家・首相)
- 父 - 晋太郎(新聞記者、政治家)
- 母 - 洋子(岸信介の長女)
- 兄 - 寛信(三菱商事パッケージング社長。妻はウシオ電機会長牛尾治朗の娘)
- 弟 - 信夫(岸家へ養子、政治家)
- 妻 - 昭恵(旧姓・松崎。森永製菓第5代社長・松崎昭雄の長女)
- 甥 - 岸信千世(信夫の長男、フジテレビ記者[553])
- 家庭
- 妻・昭恵との間に子供はいない。
- 岸信夫
- 実弟の岸信夫が第20回参議院議員通常選挙に立候補した際、安倍は秘書に対して岸の出馬に反対する発言をしたと報道された[554]。当時の秘書は「虚偽の事実を書かれ、地元での声望は地に落ちた」[555]として筆者であるジャーナリストの松田賢弥を訴えたが、山口地方裁判所下関支部は「原告の発言内容がおおむねその通りに掲載されている」[555]として秘書の訴えを棄却した。
系譜
安倍家
山口県大津郡日置村(後に油谷町に分割、現:長門市)の安倍家は、江戸時代には地元の大庄屋を務め、酒や醤油の醸造を営み、やがて大津郡きっての名家と知られるようになった[556]。明治時代になると安倍慎太郎が地元の名士として山口県議会議員に当選し、「安倍家中興の祖」と呼ばれた。慎太郎は地元の名門椋木家から婿養子彪助を迎え入れ、その子である安倍寛は山口県議会議員を経て、1937年(昭和12年)に衆議院議員に当選して中央政界へ進出、以降安倍家は山口の地盤を世襲する政治家一家となる[557]。その息子が晋三の父である安倍晋太郎である。岸信介は東条内閣総辞職後に下野して防長尊攘同志会を作った際に安倍寛と親しくなっており、その安倍寛の息子で山口中学と東大の後輩にあたる晋太郎のことをいたく気に入り、娘洋子との結婚を許した。そして慎太郎と洋子夫妻の次男として生まれたのが晋三である[558]。
佐藤家
安倍晋三の母方のルーツである佐藤家は江戸時代には長州藩士だった家系である。江戸時代最後の当主佐藤信寛は藩の郡奉行筆者役などを務めた信寛の孫娘茂世は山口県官吏だった岸秀助と結婚し、秀助は佐藤家の養子となった。秀助・茂世夫妻の間に生まれたのが晋三の祖父である岸信介(父の実家岸家の養子に入った)、および晋三の大叔父にあたる佐藤栄作の兄弟である[559]。
系図
┏昭和天皇━━━━━━━━━今上天皇(明仁)
明治天皇━━━大正天皇━━━━━┫
┗三笠宮崇仁親王━━━━━━寬仁親王
┃ ┏彬子女王
┣━━━━━┫
麻生太賀吉 ┃ ┗瑶子女王
┃ ┏信子
┣━━┫
┃ ┗麻生太郎
┏和子
吉田茂━━━━┫
┗桜子
吉田祥朔 ┃
┣━━━━━吉田寛
┏さわ
┃
┣佐藤松介 ┏寛子(佐藤栄作夫人)
┃ ┣━━━┫
┃ ┏藤枝 ┗正子
┃ ┃
┃ ┗松岡洋右
┃
佐藤信孝━━佐藤信立━━佐藤信寛━━佐藤信彦━╋佐藤寛造
┃
┃(池上)
┣佐藤作造
┃
┗茂世 安倍晋太郎 ┏安倍寛信
┃ ┃ ┃
┣━━┳佐藤市郎 ┣━━━━╋安倍晋三
┃ ┃ ┃ ┃
(岸/婿養子) ┃ ┃(佐藤) ┃ ┗岸信夫
┏佐藤秀助 ┣岸信介━┳岸信和 ┃
┃ ┃ ┃ ┃
┃ ┃ ┗━━━━━洋子
┃ ┃
岸要蔵━━┫ ┗佐藤栄作 ┏佐藤龍太郎━━佐藤栄治
┃ ┣━━━━┫
┃ 寛子 ┗佐藤信二
┗岸信政━━良子
(岸信介夫人)
(婿養子/信政養子)
┏佐藤秀助━━岸信介 ┏岸信和==岸信夫(安倍/養子)
┃ ┃ ┃
┃ ┣━━━┫
岸要蔵━┫ ┃ ┃
┃ ┃ ┗洋子
┃ ┃ ┃
┗岸信政━━━良子 ┃
┃ ┏安倍寛信
┏安倍慎太郎 ┃ ┃
安倍宗任……………安倍某━┫ ┃ ┃
┗タメ ┃ ┃
┣━━━━━安倍寛 ┣━━━╋安倍晋三
安倍彪助 ┃ ┃ ┃ ┃
(婿養子) ┣━━━━━━━安倍晋太郎 ┃ 昭恵
┃ ┃
本堂恒次郎 ┃ ┗岸信夫
┣━━━━━静子
大島義昌━━━秀子 ┃
┣━━━━━━━西村正雄
┃
西村謙三
受賞・栄典
受賞
- 第31回ベストドレッサー賞(2002年) - 政治・経済部門
GQ MEN OF THE YEAR 2006[560](2006年)- 第42回ベストドレッサー賞(2013年) - 政治・経済部門
FP Top 100 Global Thinkers(2013年)
ハーマン・カーン賞(2013年)
Asian of the Year award(2013年)
タイム誌 - 世界で最も影響力のある100人[561][562](2014年) - Leader枠で選出
栄典
オランダ:オラニエ=ナッサウ勲章ナイト・グランド・クロス - (2014年)[563]
フィリピン:シカツナ勲章グランド・カラー - (2015年)[564]
スペイン:イサベル・ラ・カトリカ勲章グランド・クロス - (2017年)[565]
著作
主著
- 『安倍晋三対論集 日本を語る』 PHP研究所、PHP研究所、2006年4月。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit}.mw-parser-output .citation q{quotes:"""""""'""'"}.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/65/Lock-green.svg/9px-Lock-green.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg/9px-Lock-gray-alt-2.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/a/aa/Lock-red-alt-2.svg/9px-Lock-red-alt-2.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output .cs1-subscription,.mw-parser-output .cs1-registration{color:#555}.mw-parser-output .cs1-subscription span,.mw-parser-output .cs1-registration span{border-bottom:1px dotted;cursor:help}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/4c/Wikisource-logo.svg/12px-Wikisource-logo.svg.png")no-repeat;background-position:right .1em center}.mw-parser-output code.cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:inherit;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;font-size:100%}.mw-parser-output .cs1-visible-error{font-size:100%}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#33aa33;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-subscription,.mw-parser-output .cs1-registration,.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left,.mw-parser-output .cs1-kern-wl-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right,.mw-parser-output .cs1-kern-wl-right{padding-right:0.2em}
ISBN 978-4569643632。 - 『美しい国へ』 文藝春秋〈文春新書〉、2006年7月。
ISBN 978-4166605248。 - 『新しい国へ 美しい国へ 完全版』 文藝春秋〈文春新書 903〉、2013年1月。
ISBN 978-4166609031。 - 『日本の決意』 新潮社、2014年4月。
ISBN 978-4103355915。
共著・編著
『吾が心は世界の架け橋-安倍外交の全記録』 安倍晋三 編、新外交研究会、1992年4月。 - 安倍晋太郎外交対象。- 安倍晋三、岡崎久彦 『この国を守る決意』 扶桑社、2004年1月。
ISBN 978-4594043315。 - 『日中対話』 安倍晋三 編、言論NPO〈言論ブログ・ブックレット 私ならこう考える-有識者の主張〉、2006年12月。
ISBN 978-4903743011。 - 安倍晋三、百田尚樹 『日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ』 ワック、2013年12月。
ISBN 978-4898314180。
論文
- Japan’s Coming “Wage Surprise” (2013年12月23日発表)安倍晋三、朴槿恵ほか『世界論』(土曜社、2014年1月)に収録予定
Asia's Democratic Security Diamond By Shinzo Abe PROJECT SYNDICATE
出演番組
テレビ
そこまで言って委員会NP(読売テレビ)- 2009年4月29日、2011年5月1日、8月28日、2012年10月7日、2013年1月13日、6月30日、2014年4月20日、2015年9月6日※スタジオ出演のみ
FNNスーパーニュースアンカー(関西テレビ)- 2012年12月19日、2015年1月14日
BSフジLIVE プライムニュース(BSフジ)- 2011年10月18日、2014年4月8日、2015年4月20日、2017年2月13日、10月5日
スッキリ!!(日本テレビ)- 2013年4月18日
報道ステーション(テレビ朝日)- 2005年1月13日、2012年9月12日、2013年12月20日、2017年9月25日など
森田一義アワー 笑っていいとも!(フジテレビ)- 2014年3月21日『テレフォンショッキング』コーナー
日曜討論(NHK総合)- 2013年1月20日、2017年1月8日
みんなのニュース(フジテレビ)- 2015年7月20日
情報ライブ ミヤネ屋(読売テレビ)- 2015年9月4日
ウェークアップ!ぷらす(読売テレビ)- 2018年6月18日
プライムニュース イブニング(フジテレビ)- 2018年5月11日
ワイドナショー(フジテレビ)- 2016年5月1日[注 14]
ニュースウオッチ9(NHK総合)- 2016年12月16日、2017年9月25日
NEWS23(TBSテレビ)- 2016年12月16日、2017年9月25日
ビートたけしの私が嫉妬したスゴい人(フジテレビ)- 2018年1月3日
インターネット動画配信
徹の部屋(AbemaTV)- 2017年10月8日
ラジオ
ザ・ボイス そこまで言うか!(ニッポン放送) - 2014年9月11日、2015年7月23日
辛坊治郎ズーム そこまで言うか! (ニッポン放送) - 2016年2月20日
須田慎一郎のニュースアウトサイダー (ニッポン放送) - 2017年5月28日、6月4日- 安倍晋三・櫻井よし子新春対談 強いニッポンの創り方(ニッポン放送) - 2018年1月1日
所属団体
創生「日本」(会長)
神道政治連盟国会議員懇談会(会長[569][出典無効][570])
親学推進議員連盟(会長)
北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟(顧問)
平和を願い真の国益を考え靖国神社参拝を支持する若手国会議員の会(顧問)
天皇陛下御即位二十年奉祝国会議員連盟(顧問)
地下式原子力発電所政策推進議員連盟(顧問)
ラグビーワールドカップ2019日本大会成功議員連盟(顧問)
日本の前途と歴史教育を考える議員の会(事務局長)
日本会議国会議員懇談会(特別顧問)- みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会
- 公共放送のあり方について考える議員の会
- 真の人権擁護を考える懇談会
- 将棋文化振興議員連盟
日韓議員連盟(副幹事長)- 憲法20条を考える会
- 日本の水源林を守る議員勉強会
- NAISの会
- NASAの会
脚注
注釈
^ 総理就任記者会見冒頭で「まず初めに、はっきりと申し上げておきたいことは、5年間小泉総理が進めてまいりました構造改革を私もしっかりと引き継ぎ、この構造改革を行ってまいります。」と述べる。むしろ加速させたいとの考えを示した[21]。
^ 官邸で訃報に接した安倍は涙を流し[23]「慙愧に耐えない」[24]と会見し、その晩は公邸で妻の昭恵に「松岡さんにはかわいそうなことをした」[23]と語っている。
^ 9月11日には妻の昭恵に対し「もうこれ以上、続けられないかもしれない」[31]と語ったが、辞任の具体的な日程までは一切明かさなかった[31]。
^ 病室内では新聞は読まずテレビも基本的には視聴せず、外部の情報をシャットアウトした環境下で治療を行った[30]。
^ 入院中、妻の昭恵から政治家引退を勧められたが、安倍は「いや、それは違う」と答え、議員辞職は拒否した[30]。
^ ただし、吉田は初任時は大日本帝国憲法での任命であるため、日本国憲法下で初任だった首相としては安倍が初となる。
^ 『週刊金曜日』において、左派ジャーナリストからは内閣発足当初から集団的自衛権を容認しアメリカに追従する軍国主義的な体制を作ろうとしていると批判された[87]
^ 2013年、6月19日にロンドンで行われた講演で「ではいかにして、成長を図るのか。国を開くこと、日本の市場を、オープンにすることです。これは、政治家となって以来、私の中に流れる一貫した哲学でした。」と国を開いていく意欲を示した[88]。
^ 安倍は、成長戦略の方針を5つ挙げ、そのひとつに「人材や産業を始めとする徹底したグローバル化」を挙げた[89]。
^ 安倍は会議の中で、「世界の人材、資金、技術を引き付け、日本の成長に結び付けるためにも、日本国内の徹底したグローバル化を進めていかなければならない。」という見解を示した[90]。
^ 同日にジャカルタで行う予定であったが、安倍がアルジェリア人質事件発生の影響で予定を早めて緊急帰国することとなったことにより行われなかったスピーチが、首相官邸のHPで公開されている[151]。
^ 日本国債の国際的流動化について2013年クリアストリームなどを交えて協議。国家財源の自給率を低下させる政策。
- 日銀決済局 「新日銀ネットの有効活用に向けた協議会」第3回会合の議事概要について 2013年11月29日
- 同年9月3日、上のソースにて、野村証券とユーロクリアが息をそろえて国債流動化をPR
^ 一族では大叔父の佐藤栄作が1973年、兄嫁の父である牛尾治朗が1981年に受賞している。
^ 当初は4月17日に放送予定であった[566]が、4月14日に発生した平成28年(2016年)熊本地震のニュースのため放送延期[567]となり、5月1日の放送になった[568]。
出典
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関連項目
- 安倍内閣
- 安倍内閣総理大臣談話
外部リンク
- 衆議院議員 安倍晋三 公式サイト
歴代内閣情報(HP開設以降):安倍総理 - 首相官邸
安倍晋三略歴(内閣官房長官時代のもの) - 首相官邸
歴代総理の写真と経歴 - 首相官邸
幹事長のブランチ (自民党幹事長時代のもの) ブログ
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党職 | ||
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その他の役職 | ||
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