黒砂糖






カップに入れた黒砂糖(左)とブラウンシュガー(右)


黒砂糖(くろざとう)又は黒糖(こくとう)は、サトウキビの絞り汁を煮詰めて作る黒褐色の砂糖(含蜜糖)で、甘味料として用いる。


brown sugarは黒砂糖の英訳だが、日本語でのブラウン・シュガー(茶色の砂糖の総称)とは異なる。




目次






  • 1 特徴や用途


  • 2 製法


  • 3 産地


  • 4 黒糖の安全性


  • 5 日本における黒砂糖


    • 5.1 定義


    • 5.2 歴史


    • 5.3 流通




  • 6 関連する製品


    • 6.1 黒蜜


    • 6.2 加工黒糖


    • 6.3 テンサイ糖




  • 7 黒砂糖を使うお菓子


    • 7.1 日本


    • 7.2 台湾


    • 7.3 韓国




  • 8 黒砂糖を用いた食品


  • 9 脚注


  • 10 参考文献


  • 11 関連項目





特徴や用途


その色から「黒」と形容されているが、これは型に流し込んだブロック状の塊の状態でのことであり、取り出して粉砕して粉末にすると褐色となる。蜜分を多く含むことから白砂糖と比べると固まりやすく、大抵はブロックを砕いた程度の状態で販売されている。これを砕いたりすり潰したりし、あるいは煮溶かして料理や菓子の材料にしたり、コーヒーや紅茶に入れる甘味料として使われるほか、飴のように直接口にして風味を楽しむ。


黒砂糖はサトウキビのアルカロイドなどの各種成分を含んでいるため、蔗糖などの糖分は80%強と砂糖の中で最も低い。本来は不純物であるカルシウムや鉄、亜鉛など各種のミネラル分が糖蜜に多く含まれているため、渋みや苦味といった雑味も多く、カラメルのように甘みも強く感じられることから、味わい深いがその独特さゆえに料理や菓子の材料としてはやや用途を選ぶ[1][2]



製法


サトウキビの茎の絞り汁を加熱し、水分を蒸発させて濃縮したものを冷やし固めて作る。酸性を中和し、不純物を沈殿させやすくするために、絞り汁に石灰を混入するが、糖分の分離精製をしておらず、砂糖の分類としては「含蜜糖」にあたる。



産地


日本では沖縄県や鹿児島県(奄美地方)の特産品として作られている。


日本国外では、バルバドス、フィリピン、ベトナム、フィジーなどが著名な産地であり、英語ではBarbados sugar(バルバドスシュガー)との呼び名もある。台湾もかつては大量に製造し、輸出していたが、近年は衰退している。



黒糖の安全性


土の中から栽培するサトウキビを黒糖にする工程でボツリヌス菌の芽胞が含まれてしまう可能性があるため、1歳未満の乳児が摂取すると中毒症状である乳児ボツリヌス症を引き起こし、最悪の場合には死亡することがあるため、警戒を要する[3]



日本における黒砂糖



定義


日本においては、消費者庁が2010年(平成22年)にJAS法解釈通知の「食品表示に関するQ&A」を改定して黒糖の定義を明確化し、翌2011年(平成23年)には再改定により黒砂糖の定義を明確化した[4]。その定義によれば、黒砂糖及び黒糖は同義で、


さとうきびの搾り汁に中和、沈殿等による不純物の除去を行い、煮沸による濃縮を行った後、糖みつ分の分離等の加工を行わずに、冷却して製造した砂糖で、固形又は粉末状のもの
— 食品表示に関するQ&A[5]

とされる。消費者庁は、黒砂糖の定義を明確化した理由として、黒糖と黒砂糖が同じもの、別のもの、わからないと答える消費者がほぼ3分の1ずつで、区別が分かりにくかったことを挙げている[4]。従来、加工黒糖や粗糖(ザラメ)に糖蜜を混ぜた再製糖が「黒糖」として販売されていたが、これにより、定義に当てはまらないものの表示に黒糖という表現が使えないようになった。この定義は日本黒砂糖協会でも採用されている[6]


また、沖縄県黒砂糖協同組合では、黒糖を、沖縄県と鹿児島県の離島で主に生産される含みつ糖のうち、サトウキビの搾り汁だけを煮沸濃縮以外の加工をせずに製品化したものと、また、沖縄黒糖を、同組合に所属する4企業1団体の製糖工場(8つの離島工場)で生産されるものと定義している。「沖縄黒糖」は2006年(平成18年)4月に特許庁の地域団体商標の登録を受けた文字商標で、同年6月には財団法人食品産業センターの「本場の本物」認証制度に認定されており、独自のマークを印刷されたうえで販売されている[1][7]



歴史


琉球王国では、1623年(元和9年、琉球王朝尚豊3年)に、中国福州へ人を送って製糖法を習得させた儀間真常によって初めて黒糖が生産された[8][9]。以後、黒糖は、沖縄の生活や文化、農業や経済と深くかかわりながら普及した。


1609年の薩摩藩の琉球侵攻によって薩摩藩に直轄されることとなった奄美群島では、1690年に薩摩藩によって琉球から製糖業が導入され、黒糖が薩摩藩の有力な財源となった。1747年には年貢を米に代えて黒糖で納めることとされ、サトウキビの栽培が優先された結果、島民は日常の食料にも事欠くこととなり、その状況は「黒糖地獄」と呼ばれた[10][11]


現在では、沖縄県と鹿児島県の離島で生産され、特産品となっている。黒糖(甘蔗糖のうち含蜜糖)の2017年-2018年期の国内生産量は10,350tであるが、このうち沖縄県が9,642t、鹿児島県が708tを占める[12]。黒糖は、沖縄県では伊江島、粟国島、伊平屋島、多良間島、小浜島、与那国島、西表島、波照間島の8つの離島の製糖工場で生産されている[13]。一方、鹿児島県では徳之島、喜界島、奄美大島、種子島等の離島において、作業所のような小規模な施設で生産されている[14][15]



流通


沖縄県や鹿児島県などサトウキビ栽培が盛んな地域では一般的な甘味料として流通しているが、それら以外の地域ではミネラル分を豊富に含むことから健康食品として扱われることも多く、主に健康食品売り場や郷土産品売り場などで販売されている。


昔からの産地である九州・沖縄地方では黒砂糖を使った郷土菓子や料理などが多い。



関連する製品



黒蜜

































































































黒蜜[16]
100 gあたりの栄養価
エネルギー
834 kJ (199 kcal)

炭水化物

50.5 g


タンパク質

1.0 g


ビタミン

チアミン (B1)

(3%)
0.03 mg

リボフラビン (B2)

(3%)
0.04 mg

ナイアシン (B3)

(3%)
0.5 mg

パントテン酸 (B5)

(16%)
0.78 mg
ビタミンB6

(32%)
0.41 mg

葉酸 (B9)

(2%)
6 μg

ミネラル
ナトリウム
(1%)
15 mg
カリウム
(13%)
620 mg
カルシウム
(14%)
140 mg
マグネシウム
(5%)
17 mg
リン
(2%)
17 mg
鉄分
(20%)
2.6 mg
亜鉛
(3%)
0.3 mg

(7%)
0.14 mg
セレン
(3%)
2 μg

他の成分
水分
46.5 g
ビオチン(B7
18.9 µg



  • 単位

  • μg = マイクログラム • mg = ミリグラム

  • IU = 国際単位



%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。


黒砂糖を水に溶かして煮詰め、とろみをもたせたもの、あるいは精糖の段階で出る糖蜜を黒蜜(くろみつ)という。日本では、みつまめ、わらびもち、くず餅、地方によってはところてんなどにかけて食べる。台湾ではかき氷や豆腐花と呼ばれる豆腐のデザートにも用いる。



加工黒糖


日本では、原料糖(粗糖)、糖蜜等に黒糖又はサトウキビの搾り汁を配合し、夾雑物の除去を行い、煮沸による濃縮を行った後、冷却して製造した砂糖で、固形又は粉末状のものをいう。また、加工黒糖の黒糖使用割合は、製品重量に対して5%以上とし、黒糖の代わりにサトウキビの搾り汁を使用する場合は、サトウキビの搾り汁中のしょ糖分重量にて読み替えるものとする[17]。従来、黒糖として販売されることがあったが、2012年4月1日から「黒砂糖」や「黒糖」と商品表示ができるのは、サトウキビの搾り汁を使った商品に限られ、黒糖に粗糖や糖みつを混ぜた商品は誤認を避けるために「加工黒糖」と呼ぶことになった。黒糖に原料糖(粗糖)、糖蜜をブレンドしているので、品質を一定に保つことができるため、加工食品の原料に適している。



テンサイ糖


テンサイについては糖分を高度に精製する必要があることから、サトウキビと同じような黒糖を作るのは難しいとされてきたが、2006年に北海道網走市の業者によって甜菜黒糖が製品化されて市販されており、食品材料としても供給されている。サトウキビ由来の黒糖とは異なる、オリゴ糖などの特徴的な成分を含有する。現在においても1社のみが生産している。


消費者庁が黒糖の製法に関して「サトウキビ」のみを原材料と定義したことで、2010年12月21日の網走市議会において、北海道の基幹作物の「甜菜」を原材料としたものも「黒糖」と表示することを認めるよう決議し、関係先に意見書を送達した。



黒砂糖を使うお菓子



日本




かりんとう



  • 日本全国に見られるもの


    • かりんとう(白砂糖のものもある)

    • 黒糖キャラメル

    • 黒糖蒸しパン


    • ようかん(白砂糖のものもある)


    • ういろう(白砂糖のものもある)

    • 利休饅頭




  • 北海道・東北

    • べこもち


    • 鶴子まんじゅう(青森県)


    • ひゅうず(岩手県)




  • 中部

    • うず巻


    • みそまんじゅう(みそまん / 味噌饅頭)


    • ぽっぽ焼き(新潟県)




  • 近畿


    • 水無月(白砂糖のものもある)

    • 那智黒


    • ながさき(白砂糖のものもある)




  • 九州


    • 黒棒(白砂糖のものもある)


    • 朝鮮飴(現在は白砂糖のものが主体)

    • 春駒

    • 一口香

    • ふくれ菓子

    • 牛蒡餅




  • 奄美群島
    • がじゃ豆



  • 沖縄県


    • ちんすこう(白砂糖のものもある)

    • ちんびん


    • サーターアンダーギー(白砂糖のものもある)

    • 黒糖カステラ

    • あまがし





台湾


  • 黒糖糕 - 澎湖諸島の地元の黒糖で作る蒸しケーキ。


韓国


  • ホットク


黒砂糖を用いた食品



  • 黒糖焼酎


  • 地漬 - 黒砂糖を用いた沖縄県の漬物。



脚注




  1. ^ ab沖縄県黒砂糖協同組合について 沖縄県黒砂糖協同組合


  2. ^ Smooth Life - 黒糖の栄養と効能がスゴイ!おすすめの活用法とは?


  3. ^ 赤ちゃんに食べさせてはいけない食べ物は?

  4. ^ ab“黒糖等の表示の適正化について” (PDF) (プレスリリース), 消費者庁, (2011年3月30日), オリジナルの2018年2月21日時点によるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20180221101328/http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin547.pdf 2018年5月26日閲覧。 


  5. ^ “食品表示に関するQ&A”. 消費者庁食品表示企画課 (2011年3月). 2018年5月26日閲覧。


  6. ^ “加工黒糖等の表示に関するガイドライン”. 日本黒砂糖協会. 2018年5月26日閲覧。


  7. ^ 黒糖について 沖縄県黒砂糖協同組合


  8. ^ “儀間真常 (ぎま・しんじょう)”. 沖縄コンパクト事典. 琉球新報 (2003年3月1日). 2019年1月10日閲覧。


  9. ^ “沖縄の農業 サトウキビ”. 沖縄こどもランド. 沖縄県 (2015年9月1日). 2019年1月27日閲覧。


  10. ^ 宮本茂頼 (2018年6月5日). “「西郷どん」描く黒糖地獄 維新のかげに奄美の犠牲”. 朝日新聞. https://www.asahi.com/articles/ASL643H0ZL64UCVL003.html 


  11. ^ 奄美の歴史 2 (PDF)”. 鹿児島県立奄美図書館. 2019年1月27日閲覧。


  12. ^ 国内甘蔗糖生産量 (PDF)”. 精糖工業会. 2019年1月27日閲覧。


  13. ^ “8つの島の沖縄黒糖”. 沖縄県黒砂糖工業会 (2014年10月). 2019年1月27日閲覧。


  14. ^ 杉本明 (2010年3月6日). “「甘み・砂糖・さとうきび」(15) さとうきびの利用技術あれこれ~黒糖、砂糖の製造法概要~”. 農畜産業振興機構. 2019年1月27日閲覧。


  15. ^ 岡山信夫「鹿児島県島嶼部および沖縄県における甘しゃ糖生産と農協の取組み (PDF) 」 、『農林金融』第67巻第9号、農林中金総合研究所、2014年9月


  16. ^ “日本食品標準成分表2015年版(七訂)”. 文部科学省. 2017年1月7日閲覧。


  17. ^ “加工黒糖・黒糖・赤糖について| 日本黒砂糖協会” (日本語). japan-kurozatou-org.com. 2018年6月7日閲覧。




参考文献


  • 伊藤汎 監修 『砂糖の文化誌 ―日本人と砂糖』 八坂書房、2008年。ISBN 978-4-89694-922-3。


関連項目



  • 含蜜糖

  • ブラウン・シュガー

  • 赤糖

  • 和三盆

  • メープルシロップ

  • 焼酎#黒糖焼酎








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